『大人の為のお題 set1-004』:欲情

『春風の悪戯』


注:このお話は『ときめきトゥナイト』カルロ&蘭世の パラレルものです。
  もしも蘭世ちゃんがルーマニアに住んでいて真壁君よりも先に
  カルロ様に出逢っていたら・・?という視点で書いていますので
  (当サイト小説『パラレルトゥナイト』の設定です)
  どうかそれをご了承のうえお読み下さい。


・・・うららかな春の日。
蘭世は留学先で高校に進学していた。
寒さの厳しい冬は去り、明るい春の光が空を満たし始めている。
そして・・暖かい風が、ルーマニアの街を吹き抜けていく。

「んんーっ 良いお天気!気持ちいー」
放課後、学校の玄関を出ると、あまりの日差しの心地よさに蘭世は大きく伸びをした。
「あっ」
蘭世は何かを見つけ、駆けていく。
「素敵・・・満開になったのね!」
校庭の隅で、1本の桜の木が一斉に花を咲かせたのだ。
日本から輸入されたそれは、故郷では儚い命だがここルーマニアでは
数週間咲き続け学生たちを和ませるであろう。
蘭世は目を輝かせながら大振りの枝々を見上げている。
すっかり暖かくなり、蘭世も久しぶりにコートを脱ぎ身軽になっていた。
スカートの裾にも春風が遊ぶ。

出口である校門のそばに・・彼女を待つ男の影がある。
彼も久々の春日に着ていたトレンチコートを脱いでいた。
それを部下に手渡し・・学校の門へとゆっくり歩んでいく。
彼の金色の前髪を桜の香を含んだ風がすうっ・・と揺らしていく。

(美しいものだな・・)
サングラス越しに彼も満開な桜の木を見留め、思わずそれを外した。
清らかな桜色が目に優しい。

その雅びな木の元に、カルロは愛しい人を見つけ思わず目を細める。
(ランゼ・・・)

咲き始めた桜の花のように瑞々しい彼女。
風に揺れる艶やかな黒髪が春の光に冴えて清々しい。
それが色白な肌、桜色の頬と相まって甘やかで若々しい色気が匂い立つようである。
すっとつま先立つ伸びやかな肢体が爽やかでもあり・・
どこかなまめかしくもある。
本人はそんなことはおそらく微塵も意識していないだろう。
”桜の妖精”
・・そんな言葉が浮かんでくるようだった。

(声を掛けようか・・・?)
いや、そっと近づいて行こう。
声を掛けると 幻のように消えてしまいそうだ・・・

蘭世にゆっくりと近づいていく。
「・・・あっ、ダーク!」
彼女の方からこちらに気づいた。
風に彼女の黒髪がなびいてそれを細い両手で押さえた。

と、思ったその時。

「きゃああ!」

春風の悪戯。

温かい突風が蘭世の足下を駆け昇り・・
彼女の制服、膝丈のプリーツスカートをめくり上げたのだ。
「いやーんっ」
眩しすぎる白い太股を不躾な春風は人前に晒していく。
両手は髪の毛を押さえようと頭に上げていて、スカートを押さえるのに
ワンテンポ遅れてしまっていた。

「!」

勿論。
カルロもばっちり・・・
(白い レース・・・)

見た、というよりは目に焼き付いて離れない様子。
一瞬の出来事にカルロは呆然となり、思わず歩みを止めてしまった。

ベッドの上で何度も見ているはずなのに。
こうして 真昼の空の下で さらにはスカートの下からちらり と見えるというのは
何故か男心をそそられる、とても とても・・・

が。
「もういやぁっ」
半泣きで座り込んだ蘭世の様子を見て、カルロはすかさず駆け寄り・・
自分のスーツの上着を脱いで小さな肩にふわ・・と着せかけた。

「・・・行こう。大丈夫だよ」
何が大丈夫なのかわからないのだが・・
カルロはとにかくそう言って蘭世を安心させようとする。
蘭世を抱き上げようか、とも思ったが、あまり大げさなことをして返って
傷つけても・・と、もう色々な思考が頭を駆けめぐる。

そうして当のカルロも動揺が顔に出そうになりサングラスを掛けたいのだが、
彼女の手前それもわざとらしい・・と必死で表情を繕っている。

「ダークっ・・私、今すっごくはずかしぃ・・・」
真っ赤な顔をして俯いたまま、蘭世は消え入りそうな小声で訴える。
ますます、そんな蘭世が初々しくて可愛らしくてカルロは眩暈を起こしそうだ。
(屋敷に帰ってふたりきりになったら このままにはしておけない・・・)
・・・どうやってこの妖精を愛でようか・・

ふ、とカルロは気を取り直す。
そして いたずらっぽくにっこりと、笑う。
「眩しい春の妖精だな・・白かった」
(白・・・?・・!)
蘭世はすぐそれが何の色を示しているのか気が付いた。
「きゃあーもうっ やっぱり見たんだぁ〜やーん!!」
ますます蘭世は真っ赤になりしゃがんだままで頭を抱えている。
余計、小さく縮こまってしまっていた。
だが。
「・・・歩けないなら 抱いていこうか?」
突然の申し出に蘭世は驚き、真っ赤な顔でぶんぶん!と顔を振って立ち上がった。
「いっ・・いいえ!歩きますっ」
にこやかに差し出される手を取って 蘭世は立ち上がる。
カルロは蘭世の小さな肩を抱いて学校の外へ向かって歩き出した。

遠くから二人を見守っていた部下二人は・・サングラス越しにちらちらと
お互い目配せしあっている。
すでに二人とも回れ右をし、不自然にならない程度にあさっての方向を見ていた。

(お前も見た・・よな)
(・・・ばっちり)
(でもそんな素振りしたら・・射殺されるぜ)
(もっともだ くわばらくわばら・・・)

イイ物を見た代償はそれなりに高く付く・・・。

このあと、午後のデートもそっちのけでカルロが蘭世を連れて寝室に直行したことは・・・
いうまでも、ない。

春の、春の悪戯。



了。

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あとがき。
お題のテーマは「欲情」だったのですが
今回は何故かさわやか? になってしまいましたねぇー。
しかも季節はずれ(自爆)

地下室も擁する当サイトらしくない? まあまあ、こういうのも有りということで
・・・許して下さい。

蘭世ちゃんのスカートが風でめくれちゃったの目撃したら、
やぱーり 心かき乱されるんじゃあないかと
いう 日頃の妄想からでした・・・・(逃)

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