どきどき どきどき・・・
嬉しいときにも、幸せで胸一杯の時にも、
緊張したときも、怖い思いをしたときも
走り回った後にも 心臓はドキドキと高まる。
では、いまのあたしは?
あたしは、今から起きる出来事に どきどきどきどきと 胸を高鳴らせている。
田舎町の雑居ビル。1階ロビーはガラス張りで表通りの車がよく見える。
あたしはそのがらん・・としたロビーの片隅で、椅子にちょこんと座って外を眺めている。
人目に付かないように、でも 彼の車が来たらすぐに出ていけるように・・・
誰かとデートなんかほんとにほんとの初めて。
ときめいて、どきどき。
あこがれの彼と 二人っきりになれるなんて、考えただけで
心臓がダンスを踊っちゃうよ。
でも、その彼は いわくつきなんだ・・
だってさ、あいつはあたしと、今カノと二股かける気なんだ。
ずっとずっと好きで、ずっとずっと見ていたから
そして ずっとずっと振り向いて欲しくて頑張っていたから
その努力がこれから実るかも知れないから 喜びで どきどき・・
でも、やっぱり後ろめたくて 誰かに見つかりはしないかと
その恐れで緊張してどきどき・・・。
それに 背徳の気分に酔って どきどきもしているのかも・・・
これからあたしたち どうなるのかな
修羅場なんか経験しちゃったりするんだろうか
それとも、ずっとあたしは日陰の身ですごす羽目になるのかな・・・
こわいな 怖いな どきどき どきどき・・・
”あっ・・・彼の車来た?”
ガラスの向こうで信号待ちをしている車。
違う。似た色だったけど彼のじゃなかった。
一気に跳ね上がった心臓。静まれ、鎮まれ。どきどき、どきどき。
あたしを選んでくれたらいいのに。あたしに乗り換えてくれたらいいのに。
すっごく私、嫌な子。
でも、私が厭な子になっちゃうくらい、彼は素敵なんだもん。
街はたそがれ。ガラス越しの空が赤紫に染まる。
(逢魔が時・・・って 言うじゃない?)
”来た・・・”
間違いない。彼の車だ。
これから始まる、彼との駆け引き。
怖くて、甘くて、緊張するよ・・・
end.
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