※ご注意
留学生蘭世ちゃんとカルロ様カップル、というパラレルな設定で書いています。
(拙宅長編:『パラレルトゥナイト』ご参照下さい)
私はカナリア。
つぼみをたわわに付けた桜の枝から 貴方を見守る小さな瞳
私の生まれた国から旅をしてきたこの木は 私とは友達のような気がする
私は時々こうして空から貴方を眺めるの
−嗚呼 変身て なんて素敵な能力(ちから)−
今日も神様からの贈り物を私は有り難く使う
私の居る国は 春の訪れは遅い。
それでも枝の節々には 開花を間近に控えた蕾が今か今かと
春の扉が開くのを待ちこがれ
今にも咲き出しそうにその身を膨らませている
見下ろせば 何処かの屋敷 窓越しに貴方が見える
沢山の部下を従えて 貴方は長い廊下を歩いていく
その歩みを見守る私は ふと、あることに気づいた
こないだは・・・
「もうすぐこの桜も花が咲くわね!楽しみだなー」
「そうだな・・去年も美しかった」
春の足音が近づくある日 まだ風は冷たい
貴方は久しぶりに学校まで迎えに来てくれたの
校舎から正門へ続く道を歩きながら 私と貴方 二人で歩いた
他愛ない話をしながら のんびり歩く昼下がり
私は貴方と話す事に夢中で・・・・そう あまりにも自然で心地よいテンポ
そして 桜の木陰に近づいたとき 人目を忍んで口づけを交わす私たち
それは あまりにも幸せで あまりにも日常のヒトコマで
私は それに気づくことはなかった
そして 今。
ボスとして颯爽と歩く貴方の歩幅は大きく その歩む速度は先日とは比べようもなく早い
それは 私と一緒の時の包み込むようなそれではなく
どこか攻撃的で まるで周囲を突き放すようで。
初めはそんな姿を「ああ 格好いい・・!」って ただ ぽうっとなって眺めていたのだけど。
”ああ、そうなんだ”
きっと 私に出逢う前の貴方、私の知らないところにいる貴方は
きっと この歩幅で この歩む早さで 人生を渡ってきたに違いないんだ
そして 貴方はただ 静かに微笑んで。
わたしと一緒に歩くときは その速さも そして歩幅も考えてくれていたのね
なにも言わずに そして私に気づかれないように・・・
そして、その事を私が言っても
きっと貴方は涼しい顔でごまかしてしまうに違いないの
一緒に歩いたときの 貴方の微笑む 優しい顔が思い出される
私は貴方と一緒にいると 色々なことを教えられるの
誰かのために優しくなる方法 気づかれないほど実りのある親切
わたしなんか まだまだ子供で まだまだ何も判ってないと思われるに違いないけど
貴方に追いつけるように 貴方に相応しくなれるように
一日一日 大切に いろんなことに気づきながら生きていこう。
心の中の 歩幅を大きくして。
私はカナリア 貴方を見守る小さな瞳
貴方がふと 立ち止まった
窓越しに 小鳥の私と 目があったと思ったのは・・・気のせいよね
扉の向こうに消えた貴方 大きな部屋はカーテンで閉ざされている
貴方のお仕事が うまくいきますように。
・・・そして また 貴方と春の道を一緒に歩きたいな・・・
了。
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