前書き。
きっかけは、私こと悠里が運営しているサイトでのカウントゲットイベントでした。
それに柚子様が参加して下さって、このお話の土台となるお題を下さったのです。
短編にするには勿体ないほど、壮大なドラマになりそうなお題でしてv
それで私お願いして、長編を書かせていただくことになりました。
”もしもあの冥王との闘いのとき 俊の体に 死ぬ筈のカルロの魂が宿ってしまったら?”
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1)
「カルロ!」
俊の呼びかけに、ダーク=カルロはニッと笑顔で応え、指にはめた
”王の指輪”をかざした。
ここは・・・冥界。
俊達は冥王を封印すべくその世界へ乗り込んでいた。
ついに冥王と対峙するときが来る。
蘭世に乗り移っていた冥王の魂が抜け出た、その時。
指輪を触媒にし、真壁俊とダーク=カルロは己の力を最大限に引き出す。
冥王へその力は放たれ、それを永遠に葬ろうとしていた。
辺りに目もくらむような光が、稲妻のように放たれた。
・・・やがて 静寂は訪れる。
(・・・)
あまりのまばゆい光のエネルギーに、望里とジョルジュはその場に
へたり込んでいた。
真っ白だった視界が、少しずつ何かの形を映しつつ戻っていく。
(なんてことだ・・!)
そこはどくろの形の部屋だったはずなのに。
周りの壁は全て粉々に吹き飛び、自分たちがいる床がまあるく残り、
空中に浮いているばかりであった。
風が、粉々になった壁を吹き飛ばしていく。
俊とカルロの放った力の凄さを思い知らされる光景であった。
視界に、同じ様などくろの部屋があちこちに点在し浮いているのが見える・・。
冥王に乗り移られて気を失っていた蘭世は目を覚ました。
(真壁くん!真壁君は、無事!?)
意識が戻ると、真っ先に蘭世は倒れ伏す彼のもとへ駆け寄る。
・・・カルロは全身に鋭い痛みを感じていた。
(私は・・・?)
ぼんやりと目を開く。
身じろぐたびに全身が痛みで悲鳴を上げている。
どうやら傷は全身に及んでいるらしい。
(死んで・・・ない?)
未だ霞む視界。だが、その目には先ほどの冥界の風景が映る。
そして・・・痛みがあるのは生きている証。
(おかしい・・・私はもうこれでこの世から消えるはずでは・・・)
いつか見た予知夢。
ダーク=カルロは自分の死期を悟っていた。
私はジャン=カルロの末裔としてすべき事をし
帰るべき場所にゆく・・・。
そして、蘭世を、・・・蘭世が大切に思うものを守りたい。
覚悟はできてていた。
彼は、死などを畏れる男ではない。
「真壁君!?真壁君っ!」
カルロの霞んだ視界の中で愛しい娘が心配そうな顔でこちらを見ている。
カルロは辛うじて笑みを返す。
「(わたしは)・・・大丈夫、だ・・・」
(覚悟はしていたが・・・なんということだろう!?
私は、私はこうして 生きている!!)
「ああ!!・・・」
蘭世は安堵のうれし涙を流していた。
そこでカルロはふと気が付く。
・・・おかしい・・・なにかが違う。
(ランゼが一番にわたしの・・ために?・・・まさか。)
ランゼが心配するのはシュンであって、私ではないはずだ。
それなのに・・・
「真壁君!良かった・・・」
蘭世は顔を真っ赤にして泣きじゃくっている。
(待て・・いまランゼは私を見て 真壁 と呼んでいた・・?)
カルロは膨らむ不安を心に抱えながら、痛みをこらえて体を起こした。
すると。そこに見たものは・・・
(あれは・・・私ではないのか!?)
死神ジョルジュが座り込んだそのそばに、白いスーツの男が横たわっていた。
ジョルジュは目に涙を浮かべている。
「だめだ。もう完全に死んでいるんじゃ、俺が助けることはできないよ・・」
(どういうことだ!?
・・・では、今、ここにいる私は!?)
「いやっ!!!嘘っ!カルロ様っ!!!」
隣で蘭世が泣き叫び、父親の望里がそれを受け止めている。
(あれは私の屍だろう。しかし、私はここにいる・・・何故?)
カルロは自分の身体を見回し、とんでもないことに気づいた。
(これは ひょっとして・・・シュンの 身体!?)
見覚えはあるが自分の趣味とは違うジャージ服。
足には使い古した白いスニーカー。
間違っても自分はこんな服は着ないし、こんな靴は履かない。
(これは夢!?・・・)
いや、そうではないはずだ。
夢ならばこんなに体中が痛むはずがない。
(・・・なんということだ・・・!)
この事実にカルロは愕然としていた。
自分は幸いにも生き残ったが、こんな形になろうとは。
全身の傷の痛みなど消し飛ぶ勢いだ。
そう、指輪たちは性悪な悪戯をカルロと俊に施していたのだ。
死んだはずのカルロの魂を俊に。
生き残ったはずの俊の魂をカルロの屍に。
そして、俊の魂は・・・天上界へと運ばれていたのだった。
「いやっ!カルロ様あっ・・・!」
自分の死を悼み、泣き叫ぶ蘭世の声が 冥界の暗い空間へと
吸い込まれていった。
私は・・・わたしは、真壁 俊に なってしまった・・・!
つづく
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