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(そういえば、温室の花を勝手に取った上に無断外出で、父上からそのあと
きつく叱られた覚えが有るな・・・)
でも、先生に想いを伝えられた幸せに浸っていて、そんな叱責の言葉も心の上を
素通りしていたな。カルロはそんなことまで思い出し、クス・・とひとり笑う。
1年ほどして、部下達から あの先生はアメリカで結婚をしたのだと
その消息を聞くことが出来た。
大人になってからそのときの事の顛末を鑑みれば、
おそらく父上は初めから彼女を(妻としてか、恋人としてかは不明だが)見初めていて、
それで彼女を私の先生に選んでいたのだろう。
そうすれば先生と接触する機会が増えるから・・
(そして、父上も、この私も 振られてしまったと言うことだな)
その結論に、カルロは思わずひとり苦笑をしてしまう。
マフィアの女になるということに、先生も動揺したのかもしれない。
それとも、すでに心に住まわせている男性がいたのかも しれない・・・
「見て〜カルロ様ーっ!すっごく素敵〜」
呼びかける声にふと我に返る。
蘭世が両手一杯に花を抱えてこちらへ駈けてくるところだった。
「すっごいの!お庭番のおじさんが選んで取ってくれたの〜!!」
色とりどりの、様々な種類の花が蘭世の腕の中で揺れている。
きちんと手入れされているそれらはどこのフラワーショップのよりも瑞々しく綺麗だった。
「うれしいなー。はやくカルロ様のお部屋に帰って花瓶に入れたいな!」
蘭世はうきうきしながら花束に顔を寄せその香りを楽しんでいる。
「全部寮に持ってかえればいい」
「えっ そんな!?」
「花瓶がないならプレゼントしよう」
「・・・ほんとに、いいの!?」
もちろんだ、と言いながらカルロは蘭世の額に唇を寄せる。
「うれしい・・ありがとう!」
蘭世は満面の笑顔をカルロに見せた。
真っ白な心で自分の側にいてくれる彼女に、カルロはさらに愛しさが増してくる。
蘭世の抱える花束の中に、数輪の あの繊細な花を見つけた。
カルロはその花は蘭世ではないと 思った。
”私はモンスターだけど 貴方が大好きなの・・・!”
蘭世は純真で、そして ある意味あの先生よりも もっと 強いのだろう・・・
蘭世にそっと口づけを落とす。真っ赤になった蘭世の細い肩に腕を廻す。
「行こう」
二人より沿い歩き、カルロは温室を後にした。
蘭世のことを、あの花々のように 大事に守りたい。
そんなことを考えながら・・・
了。
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あとがき。
またまたオエビの美麗イラストとコメント様たちに ぴぴぴ・・ときて
お話を作ってしまいまして えへへ;
どれかはお判りになりましたでしょうか?!
はい、ひるのねざめ様から頂いた5万ヒットお祝いのイラストです。
いつも本当にありがとうございます〜
カルロ様の淡いあわーい初?恋。幼い頃の恋バナには皆様色々想いがおありだと
思うのですが、今回思いついたのはこんなお話でございました。