『もういちど・・・。』:7000カウントゲット記念


俊が魔界人に生まれ変わり、16歳の姿に戻った最初の冬。

曜子の屋敷で毎年恒例の忘年会が開かれた。
今年は俊に加えて、ルーマニアから来たダーク=カルロという
シンジケートのボスが滞在していて曜子はほくほく顔だ。
なにしろ俊に負けないくらい彼も男前なのだ。
俊は呼ぶつもりでも蘭世は頭になかった曜子。
だが、カルロの『ランゼも呼んでくれ』の一言で、
(曜子は内心しぶしぶなのだが)蘭世も招待することになった。

宴会当夜。
わいわいと賑やかな宴が続いていた。
俊と蘭世、そしてルーマニアから来たダーク=カルロとその部下達。
何故か芸者に化けた望里椎羅もいて、
どこか風変わりな盛り上がりを見せている。

俊はその喧噪から離れ、神谷家の長い廊下にいた。
その隣りに・・・蘭世がいる。
宴会場で蘭世はジュースと間違ってウイスキーを飲んでいた。
その酔っぱらい様からしておそらくストレートの一気飲みだ。
「真壁くーん だっこ。」
宴会場で、皆の前で抱きつかれて俊は思い切りうろたえた。
「おっ おい!バカッ」
周りからも冷やかしの声があがる。
真っ赤になって困った俊はあわてて酔っぱらい蘭世を
宴会場から連れ出したのだった。
蘭世は肩を支えないと歩けないくらいクタクタだ。
「しょーがねえなあ もう・・・」
照れ屋の俊は、ついつい照れをごまかそうと
そんな台詞を言ってしまう。

蘭世はここ数日幸せ気分だ。
『真壁君の気持ち、教えて・・・』
そう聞いたとき、俊はその気持ちに答えてくれたのだ。
残念ながらその時はキス未遂で終わってしまったのだが、
もうそのことだけで、蘭世は幸せで胸がいっぱいになっている。
そんな蘭世にウイスキーは気持ちのいい酔いを運んでくる。
・・・そして、お酒の力は蘭世を大胆にさせる。
「真壁くん、いますっごくいいたいセリフがあんの いってもいーい?」
ドキ・・・。
蘭世のそのかわいい台詞。
その続きは、たぶん、きっと・・・!
思わず俊の鼓動は高くなる。
蘭世は薔薇色に染まった頬と潤んだ瞳で、俊を見上げた。
「真壁くん・・・」
やばい。俺だって・・男なんだっ。
「わーっ!!いい わかって・・」
「にゃあ。」
突然蘭世はかわいい声で仔猫の鳴き真似をする。
酔いが回っている蘭世はとても積極的だ。
だめ押し?で、ぴとっ と俊に抱きついた。
ふいをつかれ、さらに俊の鼓動が跳ね上がる。
「おいっ、やめ・・・」
もう俊は照れの極致。
急いで引き剥がそうと細い肩を掴んで手に力を入れようとしたとき。
「まかべくん、ダーイスキ・・・」
告白と共に、蘭世の想いが俊に流れてきた。
(まかべくん、真壁君。私、嬉しいよ。
こないだペンダントを直してくれたとき・・・キスしてくれようとしたよね!?
そのこと、私絶対忘れないよ。
私真壁君の事大好きだもん。
真壁君も私のこと好きでいてくれるなら、もう死んだっていいもの!)
・・・蘭世は俊の胸に頬を寄せる。
(王子様で身分が違うとか、関係ない!
今、真壁君と一緒にいられることが 私、幸せ・・・!)
「・・・」
俺だって、おなじ 気持ちだ・・・。
俊は蘭世に抱きつかれたまま、じっとその心の言葉に聞き入っていた。
もう、引き剥がそうとは、しない。
肩を掴もうとしていた手は、無意識のうちに細い背中に回っていた。
(とっても、しあわせ なんだもん・・・!)
蘭世はゆっくりと俊の顔を見上げた。
その顔は薄暗い廊下で月明かりに照らし出され、ハッとするほど綺麗だ。
「ね、こないだの続き、教えて・・・」
(江藤・・・)

果たせなかった想いを、もういちど。
俊の手が蘭世の温かい頬に触れていく。
優しく、そっと、やわらかく。その唇は蘭世に降りてくる。
蘭世は目を閉じ、初めて交わす想いに胸を振るわせた。
(夢じゃ、ない。本当なんだ・・・!)
そして、ゆっくり、ゆっくりと離れていく。
・・・終わりを惜しむかのように。

俊は蘭世を腕の中にそっと包んでいる。
「ぐすっ。ひっく。ふぇ・・・」
「おい、どうしたんだ?」
突然、腕の中から泣き声がし始めた。
「うっ、うれしいよおおお」
優しいキスの後、蘭世は突然おいおいと泣き出してしまったのだ。
「うわーん うれしいよおおお〜」
・・・どうやら、せまり上戸から泣き上戸に変わってしまったらしい。
お酒の困った副作用だった。
「まいったなぁ・・・」
これには俊もどうしていいかわからず、困ってしまう。

「なんだなんだぁ?」
その大きな泣き声に宴会場から何人かがふすまを開け、
その間からこちらをのぞきだした。
神谷組の男連中が冷やかす。
「おーいそこの色男!女の子泣かしてどうする〜」
「ちっ、ちがいま・・」
「まあーっ俊!!こんなところでなにやってんの!?」
ついに神谷曜子に見つかってしまった。
「さっ、俊は宴会に戻ってね! え?酔っぱらいはあっちよ!!」
曜子は俊を宴会場に押し込み、泣き酔いする蘭世を
奥の4畳半へつっこんだ。
「暖房は入っているからっ、ここであんたは酔いでもさましてなっ」
「ひっ・・・く。」


その一部始終を静かに物陰から見守っていた男がいる。
「・・・」
彼は蘭世に恋人がいようと婚約者がいようと問題ではないと思っている。
だが・・・。
(あの少年のそばから、引き離した方がよさそうだ)

障害は早く取り除くべきだと判断したカルロは
部下達にひそかに連絡を入れていた。
廊下の騒ぎが収まった後。
宴会の喧噪に紛れ、そっ、と蘭世のいる部屋のふすまを開ける。
蘭世は酔いつぶれすっかり眠り込んでいた。
ふかふかの客布団の中で、あまりの気持ちよさに熟睡モードだ。
(ランゼ・・・)
・・・その無防備な寝顔の頬に、そっと触れる。

俊は神谷曜子に捕まり、未成年なのに日本酒を飲まされこちらも
酔いつぶれそうだ。
芸者姿の望里椎羅も先ほどカルロを酔わせようと思って
一緒に大量に飲んでおり、すっかりへべれけだった。
・・・勿論カルロは全くしらふと変わらない。
その後、いつのまにかマフィアの面々が宴会場から姿を消していたり
蘭世が一緒に行方不明になって少々ややこしいことになったことは・・・
ご想像に、おまかせします。



おしまい・・・?!




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あとがき。

にゃあさま、7000カウントゲットありがとうございますv
リクエストは、

 文庫の4巻のP373で、蘭世ちゃんが酔っ払って
 「真壁くん、いますっごくいいたいセリフがあんの いってもいーい?」
 ってあります。これを蘭世ちゃんが真壁くんに
 言ったとしてお話を続ける!
 真壁くんは水をとりに行きません!
 後からカルロ様も登場します。
 」

・・・と、言うことでした。
で、私から(1)再びキス未遂でカルロ登場(2)キスした後にカルロ様
を提示させていただいたところ、(2)を選んでいただきまして。
はい♪

ふうううう。
真壁君と蘭世ちゃんのキスシーンを盛り上げるのっ、
悠里なりにがんばってみますたっ
が、うううう。
座布団が四方八方から飛んできそうな・・気がするだよ;
最後の方は、せっかく真壁君と蘭世ちゃんが盛り上がった後なので
お茶をにごさせていただきまーーす(逃)
・・・え?ちっとも濁してない?・・・スマン

あの、こっそり(でもないけど)
にゃあ様のお名前、入ってます・・・
一度お知らせしたときに特に異論が無かったので
勝手ながら入れさせていただきましたっ


楽しんでいただけましたら幸いです・・・
にゃあ様、カウントゲットのお祝いに、どうかご笑納下さい 悠里



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