<<バレンタイン企画>>
※ご注意:やはりパラレルトゥナイトと同じような設定ですので
そこをご了承の上でお読み下さい・・・


『キスの味』



出逢ってから何回目かのカルロとのデートです。

今日蘭世はチョコレートケーキを焼きました。
それを綺麗に箱詰めしてカルロの屋敷へ持って行きます。
蘭世はカルロの私室に通されました。
「ありがとう・・」
包みを受け取り、カルロは蘭世に優しい笑顔を向けます。
今日は自分で一生懸命おめかしをしてきた蘭世です。
緊張した様子がまた可愛く思えて
カルロは ふっ と笑顔を浮かべ彼女にそっと口づけを落とします。
出逢ってまだ数ヶ月の頃のこと。
(・・・)
蘭世はキスがまだ上手くありません。どこかぎこちないのです。
カルロが心を込めて情熱的なキスをしても
マネキンのようにじっと固まっています。
小説の上でしかキスを知らなかった蘭世のことですから、
仕方がないと言えばそうなのかもしれません。
どうしたらいいのかわからない、本当にそんな感じでした。

カルロは思い切って彼女にアプローチをします。
「・・・ランゼ、私の真似をしてご覧」
「??」

chu、と唇の端に。
chu、と下唇に、そして上の唇にも。
chu、と覆い被さって、味わうように、食べてしまいそうに・・・

・・・やってご覧。

その素敵な口づけに、蘭世はクラクラしながら半分夢うつつでした。
「・・・え・・」
「私がするのと同じように、してごらん」
ハッと我に帰り、蘭世も健気に、つま先だって素直に、
一生懸命に真似を始めました・・
(そう、もういちど・・)

chu、と唇の端に。
chu、と下唇に、そして上の唇にも。
chu、と覆い被さって、味わうように、食べてしまいそうに・・・
(いいえ、私が食べられてしまいそう・・・)

真似をする蘭世に、カルロも同じようにキスを返します。
すると、二人のリズムが重なって・・
実に、実に情熱的なキスになるのです。

(そう、上手だ・・ランゼ。)
真似をすることに一生懸命だった蘭世もいつしか何も考えられなくなるほど
夢中になって・・
頭の芯がクラクラと熱くなっていきます。

味わうことに夢中になって・・
いつしか舌でお互いを求めて深い口づけとなっていました。

長い長いキスを堪能して・・・そっ と唇が離れると・・
透明な雫がお互いの唇を細くつなげました。
蘭世はぼんやりとした視界でそれを見ています。
「あ・・・」
(こんなのって・・すごいよぉ・・)
カルロは彼女にハンカチを手渡し、ふっ、と微笑みます。
蘭世は強烈なキスでもう立っていられないほどです。
思わず、とん・・とカルロの胸に頭を預けます。
そして真っ赤になっている彼女を優しく腕に包みます。
足が立たなくなった蘭世をソファへ座らせ、自分も隣に座ります。
テーブルにはチョコレートケーキの箱がそのまま置かれているのが視界に映ります。

「ランゼ。今日はありがとう・・」
そう言ってまたカルロは蘭世のちいさなあごに指を添え、そっとこちらへ向けて
再び口づけをするのです。

カルロは蘭世の作るケーキがとても美味しい事を知っています。
でも、彼にはこの可愛い蘭世が、自分のために一生懸命ケーキを作ってくれたこと
それ自体がすでにプレゼントだと思えているようです。
・・・そして、彼女のキスが少し上手になったことも、
Sweetな贈り物のようでした。

・・・甘い、甘いキスの味・・・。



fin.


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