「私、結婚することにしたの」
そういわれて一瞬わが耳を疑った。
(結婚?!)
(あいつが結婚する・・・・・???)
「・・・・おめでとう」
そういうのが精一杯だった。
ほかに言う言葉など思いつかなかった。
「ありがとう」
嬉しそうに彼女が言う。
頬をほんのり赤らめた彼女のそれはまさに「結婚を控えて幸せ絶頂にいる女性」
そのものだった。
「式はいつ・・・」
「まだ決めていないの。ダークの仕事が一段落したら、と思っているのだけど」
(ダーク・・・・)
彼女の夫となる男の名前らしい。
それを聞いた瞬間、なんとも言えない気持ちで一杯になった。
「式には参加してもらえる?」
「ああ」
「よかった〜」
蘭世が無邪気に笑う。
その顔を見ることが出来るのは、俺だけではないことに心が痛む。
「じゃぁ、私帰るね。色々やらなくちゃいけない事があるから」
そういって彼女は帰っていった。
情けない話なのだが、彼女が結婚する、と聞いて俺の心は複雑に乱れた。
いつも自分の後ろを追ってばかりいた彼女が結婚する。
それはとても喜ばしいことなのだろう。
だが、同時にとても悲しいことでもあった。
いつからだろう。
彼女のそばにいるのが当たり前だと思うようになったのは。
初めて会ったのが、中学生のとき。
たまたま隣の席に座ったときの話だ。
そのときから今までずっと、俺のそばにはいつも彼女がいた。
いるのが当たり前になりすぎていて、それ以上のことなど考えたこともなかった。
そう。
俺が「蘭世を愛していた」事になど気づきもしなかった。
だが。
俺がその言葉を伝えることなく、彼女は結婚する。
ダーク、という男性と。
そのことがとても苦しい。
俺がいくら彼女を愛してもその気持ちは彼女には届かない。
(好きだといってしまおうか)
一瞬そう思った。
しかし、いま彼女に俺の気持ちを伝えることは出来ない。
言えば彼女は困惑するだろう。
俺は彼女が困惑する顔など見たくはない。
だったら。
この気持ちは胸に押し込めて彼女の結婚を祝福しようではないか。
彼女が幸せならば、俺も幸せだ。
彼女の嬉しそうな顔を見ることが出来るのならば。
俺はその笑顔を守り続けよう。
蘭世。
幸せになって欲しい。
それだけを俺は願っている。
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悠里さまの蘭世ちゃん誕生日記念イベント、『鏡の国からこんにちは』を読んでいて
何となく思いついたお話です。
原作ではカルロ様とではなく、俊と結ばれるのですが。
こちらでは「パラレルトゥナイト」ということで、蘭世ちゃんのダーリンはカルロ様ですよね。
だったら。
蘭世ちゃんがカルロ様と結婚することを知った俊はどんな反応をするのか!?
そう思った美波が考えたとんでもない企画です(苦笑)
俊がやけに女々しい男なのはご愛嬌で許してください・・・・
美波
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悠里のコメント:
登場人物は真壁君と蘭世ちゃんですが、これもカルロ&ランゼの一種ですね。
「鏡の国からこんにちは」を読んで思いついて下さったとのこと。
ありがとうございます・・・!
パラレルな世界ですから、見守る立場がカルロ様と真壁君、入れ替わったと
いう感じですね。さらにもうひとつのパラレルな世界・・。
もし真壁君が見守る立場になったとしたら、やはりこんなふうにいろんな思いを
心にしまって、彼女のしあわせを祈るのでしょう。
どういう立場になっても、いい男ですね。真壁青年。
美波様ありがとうございました。素敵な暑中見舞いを頂きました。
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