『Debut』


新しい年の幕開けを迎えた1月のことです。
蘭世はカルロ家の嫁としてオーストリアの社交界へデビューすることになりました。
そして今日、オーストリアにある国立オペラ座の格式高い舞踏会に出席します。
オーストリア本国と近隣諸国から名門の紳士淑女が集まる舞踏会です。
この日のためにスクールにも通いダンスや礼儀作法のレッスンをしましたが、
何よりの先生は夫のダーク=カルロでした。
蘭世はカルロ様にエスコートされて会場に入ります。
「どうしよう・・・とても緊張してきたわ」
どことなくぎこちない歩みの蘭世。
「心配しなくてもいい。自信を持って行きなさい。さあ、手を取ろう。」
カルロ様は微笑みながらそんな彼女を励まします。

蘭世はデビュタント(社交界へデビューする子女のこと)らしい
純白のイヴニングドレスに身を包み、
高く結い上げた黒髪には小さな銀色の冠が光ります。
さらに胸元には今日のためにカルロ様から贈られた大きなルビーのネックレスが。
ルビーは蘭世の誕生石です。
そして色白の愛らしい美少女で皆の目を引きます。
初々しいながらも白いうなじにどことなく色気を感じさせる蘭世です。
カルロ様もいつもの事ながらすらりとした長身と端整な顔立ちに黒の燕尾服が
良く映えて皆の注目の的です。

デビュタントの男女が集まり、ダンスホール中央へペアを組み並んで現れます。
お披露目として一斉にウインナワルツを踊るのです。
蘭世もこのときだけはカルロ様以外の男性と踊ります。

お披露目で蘭世のパートナーとなったデビュタントの男性は
もう一曲蘭世と・・・と思いますが
カルロ様が神々しいばかりに光り輝く姿で現れると影を潜めるしかありません。
「ごめんなさい。あれは私の夫なの・・・。」







「奥様、お手をどうぞ。」
「・・・ダーク・・・!」
彼のそばに戻ると蘭世も緊張が和らぎます。
蘭世は優雅に差し出されたカルロ様の手に、そっと手を重ねます。
オーケストラが再び美しい音楽を演奏し始めます。
ダンスの始まりです。
カルロ様のリードで蘭世のステップもいつもより軽やかです。
ワルツ、ポルカ、カドリール。
まるでこの場所は中世の時代にタイムスリップしたかのよう。
貴族達が手に手を取って踊ります。
そして、カルロ様と蘭世は一幅の絵のような美男美女。
周りから羨望のまなざしを受けながら、優雅に踊り続けます。

「・・・とても楽しいわ!でも、足が痛くなってきちゃった。」
まだまだ未熟な蘭世です。
そんな彼女をかわいい!と思ってしまうカルロ様でした。
「では、外へ出よう。」
宴もたけなわとなった頃、カルロ様と蘭世はそっと舞踏会を抜け出します。
ここからは二人だけのパーティです・・・。

そして、舞踏会は大いに盛り上がり、紳士淑女達は夜が更けるまで
思い思いに踊り明かすのでした。










-------------------------------------------------------------------------------


蘭世ちゃんとカルロ様にワルツを踊って欲しくてこんなのを書いてしまいました。
オーストリアの舞踏会デビューの話はちょっと調べただけで書いたから、
たぶん、よくご存じの方々がこれを読むとツッコミどころが沢山在るんだろうなあ;
でも、いいんです。蘭世ちゃんをエスコートしていいのはカルロ様だけなの!
二人がドイツ語しゃべれるかどうかなんて気にしないわ!
書いていてとっても楽しかったんだもん♪(完全に自己満足)
それにさ、本当はカルロ様日陰の身だからこんな表舞台に出ないよなぁ

ああ、誰かイラストでワルツな二人を描いてほしぃです・・・。



閉じる
◇小説&イラストへ◇