『君の瞳に天国が見える〜ときめきアナザーストーリィ〜』

後日話:・・・楽園にて

(7):最終話



天使リンゼは天上界の空高いところを飛んでおりました。
かつてとは違い、青年の姿をした彼は 青空の中を
さながら太陽神アポロンのように逞しい身体で日の光を反射し輝きながら
進んで参ります。
彼の金色の髪も風に乗りキラキラと輝き、美しいかんばせにかかっておりました。

姉天使のお使い・・巻物を届けること、を代わりに済ませた彼は
まっすぐ天国には帰らず、まだこの世界に留まっております。
・・・・ある男を捜すのです。
彼の腰には紫色の袋が下がっておりました。その中には・・・
優しい彼の面差しにそぐわない物が入っています。
名もない短剣。
・・ですが、その短剣は刺された者は皆魂が砕け散り完全に消滅してしまう力を持つ、
と言われているのです。

(・・・)
天使リンゼはしばらくそうやって天上界の上を飛び回っておりました。
「!」
ふいに天使リンゼは空中で浮かびとまります。
冷静だった顔になにか険しい色が浮かんで参りました。
(みつけた・・・)
姉天使が巻物を落とした辺りへ戻れば再びあの男に会えるだろうと、
天使リンゼは見当をつけていたのです。
そしてそれは確かに正解でした。
眼下に小さく、丘の上に佇む人影が見えます。
天使リンゼはその人影をじっと見据えたまま、腰の袋から短剣を取り出し
その刃を鞘から抜き放ちました。
両手で柄を持ち、構え・・・
(背中にひと突きでおしまいだ!)
天使リンゼはひとつ大きく息を吸うと、まっすぐ、急降下していくのです・・
そう、”あの男”・・・ダーク=カルロの背に向かって・・。





「・・・」
天使ランゼが目を覚ましたとき・・・
彼女はベッドの上に寝かされておりました。
(ここは!?)
あわててがばっ と起きあがると、首の後ろに、にぶい痛みが走りました。
それは天使リンゼに昏倒させられたときの名残でした。
(・・ここはリンゼの部屋!)
天使ランゼはあわてて起きあがました。
(リンゼを止めに行かなきゃ!)
天使リンゼは天使ランゼを気絶させ、天上界へダーク=カルロを倒しに行ったのです。
転げ落ちるようにベッドから飛び降り、出口へと向かいます。
ですが・・・
扉も、窓も。
「開かない!開かないわ!!」
部屋じゅう飛び回って出口を探しますが、どこも鍵がかかって開かないのです。
しかも、その 鍵 は、どうやら天使リンゼの施術のようで、
術を施した本人しか開けられないしかけになっておりました。
「開けて!!!!誰か!!」
天使ランゼは必死に扉を拳でドンドン!!と何度も叩き外を通る誰かに訴えかけました。
・・・しかし、その音さえ無情にも、その扉の外へ出ることは叶わないようでした。
「・・・どうしよう!!」

天使ランゼは蒼白な顔で、その開かない扉の前にへたり込んでしまいました。
絶体絶命、絶望のどん底に突き落とされたような思いです。
このままではリンゼがカルロを刺し殺してしまいます。
(カルロ様がいなくなってしまうなんて嫌!・・そして、リンゼが恐ろしい事をするのも
 絶対にだめよ!!)
「どうしたら・・・ああ、神様・・・」
カルロと再会した今、再び、そして永久に彼を失うことなど天使ランゼにはもう考えもつかないことでした。
もしそうなったら・・・そうなったら・・・
きっと、私は、私ではなくなってしまう・・・。
そして私はきっとリンゼが許せなくなってしまう。
恐ろしい想像でがくがくと天使ランゼの身体が震えます。
(リンゼを絶対に止めなきゃ!)
「神様!」
天使ランゼははっ、と思いつきました。
「そうだ、神様にお願いするのよ!!」
天使ランゼはいちど大きく息を吸い込み、扉の前でひざまずき、両手を胸の前で組んで
静かに瞳を閉じ、祈り始めました。


『お願いです、神様。私の最初で最後のお願いを聞いて下さい。
 私は天上界にいるダーク=カルロ様を愛しています。
 でも天使リンゼも大好きなのです。
 天使リンゼがダーク=カルロ様を憎む気持ちは私も分かります。
 でも、だからといって天使リンゼに恐ろしい事をさせたくないのです。
 そして、私はカルロ様を失いたくないのです。
どうか、どうか、私に天使リンゼを止めに行かせてください!
この・・この扉を開けて下さい!!』

必死に目をつぶり、天使ランゼは祈り続けます。

するとどうでしょう。

扉はなにも動きません。

でも。天使ランゼの身体から、なにやら白い光が零れだしました・・・。
白い光は次第に大きくなりながら、天使ランゼの身体を、そして彼女のいる部屋全体を包みだしたのです。
一瞬、ひときわ大きく光がなったと思った刹那。
急速にその光はしゅるしゅるとちいさくなっていき・・・
最後には、何事もなかったかのように消えてしまいました。
そして。
部屋には誰の姿もなくなったのです。
消えた光と共に、天使ランゼの姿も部屋から消え去っていたのでした。




天使リンゼは刀を構え、ある一点に向かい急降下しております。
「!」
長く天上界に住まっているとはいえ、ダーク=カルロはあらゆる危機を乗り越えてきた男でありました。
空から鋭く落ちてくる”殺気”に間一髪で気づき・・
素早く横へ身を投じ”それ”から逃れておりました。
(・・・誰だ!)
カルロは草むらで一回転し、周りの花や葉を散らしながらひざまずいて体勢を整え、
落ちてきた”殺気を放つ者”を見据えました。

はあはあと息を切らせたその翼のある青年。
(・・・確かランゼが、リンゼは成長したと言っていたが・・・)
「・・・リンゼなのか?」
カルロは立ち上がり膝についた葉を片手で払い落としながら、
落ち着いた口調でその青年天使に声をかけました。
「そうだ!」
天使リンゼは悔しそうな顔で、まだ落ち着かない呼吸で・・吐き捨てるように答えました。
「・・・この僕が失敗するなんて」
「・・・」

カルロは何事も・・・襲われたこともなかったかのような落ち着いた表情で、
静かにその青年に対峙します。
「・・・そんなに私が憎いのか」
その問いに、天使リンゼはギッ、と鋭い目でカルロをにらみ返しました。
「姉さんの心を救うには、これしか方法がないんだ!」
「・・・」
「僕はずっと・・今度お前にあったら姉さんの、姉さんの心に魔法をかけたお前を消そうって
 心に決めていたんだ!」
「何故そう思う?」
「僕は調べたんだ。どうやったら姉さんにかかった魔法がとけるかって。
 そしたら魔法をかけたそいつを消滅させるしかないっていうじゃないか。」
天使リンゼは人間界から帰ってきてからの天使ランゼを思い起こしておりました。
黒い髪、黒い瞳に姿を変え、仕事に没頭する日々。
そして、ときおり立ち止まっては遠くを見つめる目・・・。
「天使が恋するなんておかしいんだ。そんなのただの魔法だよ。そんなことに振り回されている
姉さんが不憫でしょうがないよ。
そして・・なにより僕は、僕と姉さんを深く傷つけたお前がずっと許せなかったんだ」
姉天使を誘惑し、人間界へ逃亡する手引きをさせ、あまつさえ翼を奪ったこと。
そして自分は魔界から逃げ出したカルロを取り戻した者への褒美に掲げられ、
深い傷を負わされ死ぬことも叶わず苦しめられたこと・・・
「・・・」
天使リンゼはカルロをにらみつけたまま、再び短剣を構えました。
「この刀はね、刺されると魂が消滅してしまうんだよ」
天使リンゼがそう言い放った途端、カルロの身体は金縛りのようになって動けなくなりました。
どうやら短剣の妖力のようです。
しかし、カルロは一向に慌てた様子がありません。
冷静な瞳で、短剣を構える弟天使を見返しておりました。
そのおだやかともいえるカルロの様子に、天使リンゼは訝しげな視線を彼に向けます。
「・・・逃げようとしないんだね。・・逃げられないんだろうけどさ」
「・・・お前がそれで納得するなら私を刺せばいい」
「?」
「確かに私が過去にお前達にしたことは間違っている事だ。
 それはいくら詫びてもとりかえしのつくものではないだろう・・
 そして、私が消えてランゼが天使として本来のあるべき姿に戻るなら 
 それで構わない・・むしろ本望だ。
 私は、私なりにランゼを・・天使のあの娘を愛しているのだから」
その返答に、天使リンゼは一瞬ひるみました。
天使ランゼを ”愛している”と・・。
そして、彼は運命をそのまま受け入れようと、静かに目を閉じ俯いているのです。
天使リンゼはぶるっ、と・・迷いを振り払うように頭をひとふりしました。
「・・僕は心を決めてここへ来たんだ・・お前を消すんだって!」
天使リンゼは翼を振るい軽く大地を蹴ると、まっすぐに馳せ飛びます・・
短剣の切っ先はぴたりとダーク=カルロの左胸を狙って・・!



「だめえーっ!!!!!!」



突然、二人の間に もう一人の天使が現れたのです。
彼女はカルロのすぐ目の前にテレポートしてきたのでした。
聞き慣れた声に驚いたカルロに彼女は構わずとびつきます。
「きゃああっ・・!」
天使リンゼがそれに気づくのには遅すぎました。
気づいて切っ先を緩めはしたものの、その勢いまでは止められません。
空中に白い羽根がいくつも舞い、その羽根には血しぶきがまだらに
飛び散っておりました・・

「ランゼ!!」
カルロの目の前で天使ランゼがゆっくりとスローモーションのように倒れていきました。
俯せに倒れた天使ランゼの右の翼の根本に、深く大きな傷がばっくりと口を開けておりました。
続いて羽根も一部が切り裂かれております。
カルロはすかさず自分のスーツの上着を脱ぎ、それで止血しようと背中の傷口を押さえます。
「ランゼ・・・ランゼ!」
カルロはもう一度彼女に声をかけます。
しかし血に汚れたその横顔は瞳を開けません。
傷口を押さえていた上着はみるみるうちに真っ赤に染まります。
カルロにとって、もう自分を襲った天使リンゼの存在は眼中にありませんでした。
ただただ、天使ランゼの容態をなんとかしなければと思い手が動くのです。
そうやって応急手当しながらも、恐ろしい予感にカルロの心は支配されていきます。
『刺されると魂が消滅してしまう』
カルロは先ほどのリンゼの恐ろしい言葉を思いだしていました。
(今ここで彼女を亡くしてしまったら・・・)
喉が締め付けられ、冷たいものが胸を滑り落ちてゆきます・・・
吸血鬼の蘭世を魔物達によって消滅させられてしまったときの、かつての衝撃が
フラッシュバックのようにカルロの脳裡をかすめていきます。

「姉さん・・・姉さん!」
偶然とはいえ姉天使を傷つけてしまった天使リンゼは、しばし呆然としていました。
(僕はなんて事をしてしまったんだ!)
しかし、でくのぼうのように突っ立っている自分にすぐ気が付きました。
体中から血の気が引き・・じんじんと手先足先がしびれて来ます。
倒れ伏している姉天使の身体は・・すでに真っ赤に染まっておりました。
とにかく、何とかしなければ。姉さんを助けなければ!
「僕、ここの誰か・・助けを呼んできます!!」

よろめきながらもきびすを返し翼をはためかせたその時。
(!?)
突然、3人の周りがまばゆい光に包まれたのです。
カルロと天使リンゼが思わず空を見上げると・・楕円の太陽のような光が
こちらに向かってきて来ておりました。
どうやらまばゆい光はその楕円の太陽からもたらされているようです。

(生命の・・・神様!?)
天使リンゼはそれが何であるかすぐに気づきました。・・・彼は思わずその場に
膝をつき、頭を垂れ祈りました。
『神様、どうか姉さんを救って下さい・・・僕は とんでもない過ちを犯してしまいました。
 どんな罰でも受けますから、どうか 姉さんの傷を治して下さい・・!!』

『・・・』

光は何も返事をしませんでした。
しかし。
(!)
一層まばゆく光を放ち・・3人をその光で包み始めたのです。
天使リンゼもカルロも目を開けていることが出来ません。
目を閉じてもなお白く輝く視界に顔を伏せ、必死に耐えておりました。

(・・・)
しばらくして。
その光が急速に消えていったことに気づいたのは・・・カルロが先でした。
おそるおそる目を開けます。
空は何事もなかったかのように普通の景色に戻っておりましたが・・
何よりもカルロには腕の中にある天使の容態が一番であり、そんなことは気にも留めておりません。
(!)
血で真っ赤に染まっていたはずの上着が白く戻っていることに気づきます。
カルロは俯せた天使ランゼの背から、おそるおそる上着を取り去ってみました。
すると。どうでしょう。
天使ランゼの背からは・・跡形もなく傷が消えていたのです。
流れていたはずの血さえもキレイに消えて無くなっておりました。
ただ、切られた羽根の一部は修復されることなく、そこだけざっくりと切り裂かれ
向こうの地面が見えており・・彼女を襲った禍の跡を残しておりました。

「ん・・・」
「ランゼ!」
やがて天使ランゼは気が付いたようです。カルロが見守る中、ゆっくりと その瞳が開きました。
「かっ、カルロ様!どこも怪我はない!?」
我に帰った天使ランゼはあわてて飛び起きカルロに問いかけます。
「私のことなど、どうでもいい・・!ランゼ!!」
「え?」
どうやら天使ランゼはショックの余り、切られたときの記憶が抜け落ちているようです。
「どこも・・・どこも痛くないのか?」
カルロは奇跡を見るような表情で・・震える両手で天使ランゼの頬を包みます。
その彼の目に・・光るものが ありました。
「カルロ様・・・?!」
天使ランゼの方はそのカルロの表情に驚きを隠せないようです。
「姉さん、ごめん・・僕、姉さんをあの刀で斬りつけてしまったんだ。
でも、今 生命の神様が 姉さんを助けてくれたんだよ・・・」
天使リンゼもそばで少しうなだれ・・姉天使に説明をしました。
「あ・・」
「お前を・・失ってしまうかと思った・・」
そうつぶやいた途端、カルロの目からひとすじ涙がこぼれ落ちました。
その涙を拭うこともせず、カルロはじっと天使ランゼを見つめています。
その長い睫毛にも、また涙が光っているのです。
「カルロ様!」
天使ランゼも漸く今あったことに合点がいき・・・カルロの涙を見て、
彼女の涙腺もみるみるうちに緩みだしました。

「よ・・・よかったぁ・・・あーん!」

天使ランゼはカルロに飛びついて抱きつき、おいおいと泣き始めました。
カルロもその細い天使の身体を壊れんばかりに抱きしめております。

(・・神様、ありがとうございます・・・)
天使リンゼも涙をこぼし、右手こぶしでぎゅっ、とそれを拭いました。

・・・しばらくして、天使ランゼの感動の波も落ち着いてきた頃・・・
「姉さん。僕はもう・・帰るね」
「リンゼ・・・」
天使ランゼはカルロから離れ、姉思いの弟天使を見つめました。
「リンゼは悪くないんだからね。みんな私が勝手にやったせいなんだから!」
「僕は・・」
天使リンゼは少し言いよどみました。
「僕は、姉さんが幸せだったら、それでもういいや」
そう言って俯き、数歩下がります。
「リンゼ。」
カルロはその青年天使に声をかけました。

「確かに私は過去、この天使を捨て魔界に戻った。」

その声に天使リンゼははっとしこちらを向きました。
そして天使ランゼもその台詞に慌てます。
「違うもの!あのときはリンゼを助けようとしてくれたんだよね!?
だから、カルロ様は魔物達に逆らわずについていったんだわ!だから・・」
静かにカルロは首を横に振り、天使ランゼの言葉を遮りました。
「あの騒ぎの元凶は私であったから、当然のことをしたまでだ。
 ・・・そして理由はどうであれ、あのとき私は、お前を残して立ち去った」
「・・・」
「お前達を利用もしたし蘭世の身代わりだと思ったこともある。だが・・・」
カルロは優しい視線を天使ランゼに向けます。
「今は、ただ彼女を大切にしたいと、思っている。
数千の言葉よりも、それはこれから私の態度で示していきたいし、
それを見ていて欲しい」

「・・・・そうだね・・・」
天使リンゼは落ち着いた声で、そう、答えました。
「僕は 天国からずっと見張っているから・・」
青年天使はふいに翼を大きくはためかせ、宙に浮きました。
「姉さんをもし不幸せにしたら、その時こそは覚悟をしろよ!」
「リンゼ!」
天使ランゼはそのきわどい発言に驚き咎めようと一歩前へ出ます。
それでも構わず天使リンゼは二人を置いて、ぐんぐんと天高く舞い上がっていきました。
「さよなら 姉さん!幸せにね!!」
「リンゼーっ!・・・あっ、ありがとうーっ!」
天使ランゼは手がちぎれるのではないかと思われるほど一生懸命に手を振り、
彼の大きな銀白の羽根が小さく小さく、そしてその姿が消えるまで見送るのでした・・・。

「行っちゃった・・・」
天使ランゼは俯き、少し寂しそうな顔をしました。
カルロはそんな彼女の細い肩を慰めるようにきゅっ と抱き寄せました。
そして・・ふと天使ランゼの右翼に視線を移します。
「私のために、美しい羽根に傷をつけてしまった・・」
またカルロの眉が曇りました。
そんな彼を元気づけようと天使ランゼは明るく答えます。
「羽根は、また生えてくるの・・時間はかかるけど、大丈夫よ!」
「・・・」
「私も、カルロ様も、無事で良かった!!」
そう言って大げさに天使ランゼはカルロの腕に頬を寄せぎゅっと抱きつきます。
「えへ・・これからは、どうぞよろしくねっ」
「ランゼ・・・」
カルロは天使ランゼの頬に手をそっと伸ばします。
「そうだ。ずっと 一緒にいよう・・」
そして。

丘の上で抱き合い口づけを交わす二人を、遠くから目を細めて眺める二人の影がありました。
ジャンとランジェです。
「・・どうやらうまくいったようだね」
「そうですわね。私たちの出る幕はなかったようですわ」
ジャンの右手にはなにやら書物があります・・・そう、くだんの巻物です。

「”暁の番人”・・ジャン=カルロ」宛の
巻物の内容は?・・・

ジャンは手にしていた巻物をひもとき、ランジェにも見えるように
二人の前に両手で広げました。

『天使ランゼを、その世界で預かって欲しい
これはその天使が望むことだから気兼ねは無用。
新しい住人として迎えてやって欲しい
その天使は、元々 そちらの住人 ダーク=カルロへの褒美として
この世に存在する者である・・・』

「・・・なんとまあ。」
ランジェはすこし驚いたようにジャンの顔を見上げます。
遠くで仲むつまじくしている二人を再び見上げ、ジャンはにっこりしました。
「敢えて彼らにこの書簡は見せる必要はないだろう・・」

・・・天上界に優しい風が吹いていきます。
丘の上の二人を祝福するように、花吹雪が舞い散り流れていきました。


end



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