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『動物園に行こう』

まえがき。
当時、ようよう様(「この胸のときめきを」)とお話ししているうちに、
カルロ様でギャグ話が書けるか? という話題になりまして
このお話を作ってみました。少し力が入りすぎている嫌いがあるのですが
ときめきトゥナイト原作チックに仕上がってたらご喝采です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


ある朝。
俊が江藤家に居候し始めてしばらくたった頃。
蘭世と俊はひさしぶりに外へ遊びに行くことになった。
二人で隣町の公園にある動物園に行くのである。
「あなたたちも気分転換になるでしょ?」
海外旅行から帰ってきた椎羅が大プッシュして
二人のお出かけを設定した。
俊王子と蘭世をくっつける作戦にでているのだ。
(うふっ 今日はまるでデートみたい!嬉しいなぁ!!)
蘭世は朝からうきうきして身支度をしていた。
俊は普段と変わらないふりをしているが、実は内心まんざらでもない。

「行って来まーす!」
「夕飯の時間には間に合うよう帰ってらっしゃいね〜」
「はあーい!」

二人は並んで江藤家の玄関の扉を開けた。
蘭世は鼻歌混じりだ。
「忘れ物はねえか?」
「うん!お弁当も持ったし大丈夫!」
蘭世はにこにこ顔で答える。
そのとき。

「・・・ん?」

どこからかひゅるるるるっる〜と音が聞こえてきた。
この音・・・確か・・・?
「きゃあああ!!またっ!!」

蘭世の指に、カルロから贈られた例の指輪がすぽんと飛び込んできたのだ。
蘭世は指輪がはまった手の手首を持っておろおろする。
俊はその指輪をすかさず蘭世の薬指から外した。
(全くなんて指輪だよ腹がたつぜ・・・)
先日、江藤家にダーク=カルロと名乗る男が乗り込んできた。
そしてそれは蘭世にこの指輪を贈った張本人だ。
カルロがこの家に来る直前に、やはりその指輪は
蘭世めがけて飛んできていた。
指輪が飛んでくるたび、カルロが暗闇で
蘭世に言い寄っている場面を思いだす。
俊の心の中で嫉妬といういらいらが津波となって暴れまくるのだ。
そして、今日も指輪が飛んできた。
「と、言うことは・・・」
蘭世と俊は顔を見合わせ、一緒に庭の向こうの並木道を見やった。
二人は1台の黒塗り高級車がこちらへ近づいてくるのを認めた。
・・・そう。今日もカルロが江藤家へやってきたのだ。
愛しい蘭世に会うために。

「おはよう、ランゼ。」

カルロは車から降りるとすかさず蘭世に近づき、
手の甲に口づけて挨拶した。
カルロは日本語をすこしずつ覚えだしたらしい。
その挨拶は日本語であった。
「あ、あの・・・・オハヨウ・・ゴザイマス」
蘭世は顔を真っ赤にしてもごもごと挨拶を返した。
「行くぞ」
俊はカルロを無視して蘭世を連れ出そうとする。
「何処へ行く?」
カルロは俊の肩を掴んでそう尋ねた。
「・・・」
「あの・・隣町の動物園に行くんです」
俊が無視をしていると、蘭世がそう説明した。
(バカっ正直に答えやがって・・・!)
「私も行こう・・・車に乗るといい」
「いいえ!電車をつかいますから・・・」
じろっと俊ににらまれ慌てて蘭世がそう訂正すると、
カルロは蘭世に寂しげな表情を一瞬むける。
・・・蘭世はその表情にヨワいのだ。
「あの、真壁君が一緒なら・・・」
中央に蘭世をはさんで、両脇にカルロと俊が座った。
そうして黒塗り高級車は元来た道を走りだした。

何となく蘭世は居心地が悪い。
肩をすぼめ小さくなっていた。

(おまえは電車なんか庶民の乗り物だとか思ってるだろ?
 住む世界が違うんだよ)
(私には時間が余りない。車が一番移動の効率がいいのだ)
(・・・それにしてもなんでお前がついてくるんだよ)
(これは私の車だ。嫌ならそこでひとりで降りろ)
(ばかやろう!降りるときは江藤も一緒だ)

・・・テレパシーの応酬。

蘭世は俊に声を掛けたいのだが、なにか異様な雰囲気を察知して
遠慮していた。
会話がない、しん・・とした状態がつづいていた。

やがて自動車は大きな公園の駐車場へと滑り込んだ。
蘭世はほっと胸をなで下ろす。

そこは、大きな公園に無料の動物園が併設されている所だった。
蘭世は動物園に来たのがとてもうれしい。
「きゃー ペンギンさんだ!」
「すごーい!フラミンゴって綺麗ぃ〜」
あっちの檻、こっちの檻へとスキップではしゃぎ廻っている。
男二人が2メートルほど後ろで火花を散らしあっているが
そんなことは気づいてもいないのか、忘れてしまっているのか。

「あ!しまった!!キリンの所に水筒忘れて来ちゃった!!」

突然蘭世は俊とカルロから離れ今来た道を走りだした。
「取ってくるからここで待っててねぇ〜」
カルロと俊は広場の真ん中で二人取り残された。
妙な沈黙が流れる。
カルロはその沈黙を破る気は全くないらしい。
仕方なく俊が何か会話をしようと口を開きかけた。
だが。
(・・・江藤!?)
俊は何かを察知し、突然カルロの前からその姿を消した。
テレポートしたらしい。

(!?)
何も言わずに俊が消えてしまった。
カルロは突然の現象に冷や汗を流していた。
だが、つとめて平静になろうとする。
(あの者達なら、何が起こっても不思議はないのだ・・・)
カルロは襟元に忍ばせた無線で部下を呼び出す。
すでに園内に部下達を配置していたのだった。
『ポイントA。ランゼはどうした』
『はっ、それが・・・』
蘭世をある場所で見失ったというのだ。
カルロは走って部下:ポイントAのいる場所まで向かった。

そこには。

カバが2頭倒れていた。


皆さんは陸に上がったカバをご存じだろうか?
あの重い巨体。
のそりのそり という形容を想像するだろう。
だが、ひとたびカバが意を決すると
イノシシのごとくものすごい勢いで突進してくるものなのだ。

メスのカバが何らかのきっかけで檻から飛び出し、
パニックになり走り出したらしい。
たまたまその行く先に蘭世がつっ立っておりぶつかったのだ。
だが、蘭世は吸血鬼の本能でカバに噛み付き変身し
はねとばされる難を逃れたのだった。

だが、何故か2頭とも気を失っていた。
飼育係が蘭世の方を麻酔銃で撃ったため気を失ったらしい。

「!・・・・?」
カルロ、そしてその部下達は2頭のカバを遠巻きにする。
俊はカバの側に座り込んでいた。
カルロは俊にテレパシーをとばす。
(お前、そんなところでなにをやってる?ランゼは?)

(こいつらのどっちかが江藤なんだよ)
(・・?どういうことだ?)
それを聞いて俊は鼻をふふん、とならした。
(わからねえのか?変身しちまったんだよ!)
カルロの顔色が変わった。
(なんだと・・!?)
(江藤の能力、知らなかったのかお前?)
(・・・)
カルロは目を白黒させている。
(・・・どうやったら元に戻るのだ?)
(くしゃみをしたら戻る)
俊は得意げに答えた。
”俺の方が江藤のことを良く知ってるんだ。
お前なんかの出る幕はねえよ!”
・・・とでも言いたげな表情である。
(・・・・)
カルロはひたすら口をぱくぱくさせていた。 

どっちかが蘭世らしいのだと・・・
(一体どちらなんだ・・・??)

ここにいるのは、蘭世に噛み付かれ昏倒したカバと
麻酔銃で眠っている蘭世が変身したカバだ。

俊はカバの背中に手を掛け顔をのぞき込んでいる。
でも蘭世は姿をコピーしているわけだから
区別など出来るはずもない。
そして、俊も蘭世の意識がないのでは
テレパシーを使っても”本カバ”と”蘭世”を
区別することが出来なかった。

カルロは青筋を立ててこめかみを押さえていた。
変身するところを見ていなくて幸いだ。
100年の恋も冷めるところだ。
今でも蘭世=カバ だとおもうと頭がクラクラする。
しかし。
気を取り直してふたたび冷静に頭を切り換える。

(しかし何故気絶している?)
(そこのおっさんに麻酔銃でうたれたらしいぜ)
カルロは2頭のカバのそばに飼育係の姿を認めた。
「しまった!」
カルロは隣にいた部下に素早く指示を出す。
「コショウを用意せよ」
「・・・は?」
「調味料のコショウだ!なにをやっている。時間がないのだ」
「・・はっ!!」
早く蘭世の変身を解かないと蘭世も凶暴なカバと一緒に
カバ舎に入れられてしまう。
(とりあえず時間を稼がなくては・・!)
カルロは意を決し、カバのそばにいる飼育係の男へと近づいていった。


「・・・2頭確保できたぞ!早く搬送車を用意してくれ」
飼育係の男は無線で仕事仲間と連絡を取っていた。
「そこの飼育係」
「?なんですかお客さん?危ないから離れて・・」
「1頭はわたしのペットだ」
「はぁ!?」
「散歩につれてきていたのだ。返して欲しい」

横から突拍子もないことを言われ、飼育係は面食らってしまった。
そばで俊も目を丸くして驚いていた。思わずカルロの顔を見返す。
(カルロ、お前一体何を言い出すんだよ・・・!)
(貴様は黙っていろ)

・・・カバがペットだと?
おまけに”散歩”?

(こいつ ひょっとして頭がおかしいんじゃ・・)
飼育係は近寄ってきた男たちを頭の上からつま先までまじまじと見た。
二人は顔が似ているからきっと兄弟だと飼育係は決めつけた。
若い方はごく普通の、だが体格の良い、男前の好青年だ。
そしてスーツ姿の外人は?
身なりは自分達などよりもはるかにきちんとしているし、
表情もいたってまともだ。
しかも映画俳優のように格好いい。
遠巻きにしている黒スーツの男達はきっとこの男の部下かなんかだろう。
そして一様にサングラスをしている。
さながらギャング映画から抜け出してきたような奴らだ。
(・・・ちょっと用心した方がよさそうか・・・なんか雰囲気やばいぜ?)

飼育係はとりあえず適当にその男の相手になる。
「兄さん、カバなんて普通の家じゃあ滅多に飼えるもんじゃあないぜ」
「・・・私の屋敷には専用のプールが有る」
「そりゃ驚いた・・・!!」
飼育係は目を丸くして答える。
(なんだよ 最近の金持ちの道楽か?・・・変わってるなあ)
俊が「カバがペットだ」と言っても誰も信用しないだろう。
だが、カルロが言うとそれっぽく思えてしまう。
金持ちのオーラというのは確かに実在するのだった。

カルロも2頭のカバの身体をざっと見渡す。
麻酔針を探したのだ。
麻酔針が刺さっている方が蘭世のはずだ。
だがすでに飼育係が針を抜いた後らしく
どちらが蘭世なのか既に見分けがつかなくなっていた。

「どちらを麻酔銃で撃ったのだ」
「へ?・・・ありゃ どっちだったかな?!」
飼育係は針を打ち込んだあたりの肩を確認していた。
だが、針跡はカバの厚い皮のしわの下に埋もれているようで
全く解らない。

「困ったな・・・どっちがうちのカバかな?」
カバが自分の所以外から来るなんて
夢にも思わなかったから(当たり前の話だが)、
飼育係はどちらが誰なんて
気にも留めていなかったのだ。

飼育係は次にカバのお尻側へ廻った。
個体を確認しようと、まず雌雄の識別を
しようと思ったのだ。
飼育係だから当たり前の作業だった。
カバのお尻をのぞき込んでいる。

「・・江藤から離れろ!!」
「・・・ランゼに触れるな!!」

俊とカルロは思わず大きな声を出してしまった。
ふたりとも、蘭世が他の男に触れられてるような
錯覚を同時に起こしてしまったのだ。

突然のクールなナイスガイと好青年の剣幕に飼育係は
驚いてしまった。
思わず手を止めかがんでいた上体を起こし
まじまじとスーツが似合うその男と健康的な好青年の顔を見くらべる。
俊はしまった!という表情で顔を赤くし横を向いていた。
「兄さんたち、そんなにこのカバが好きなのかい・・!?」
「当たり前だ」
カルロの方は、普通の声で堂々と胸を張りそう答えた。
(こいつら、カバフェチ??)
カルロのその平然とした様子にさらに目を丸くする飼育係。
飼育係はカルロに対する胡散臭さを一気に倍増させてしまった。
カバに対する愛着と言うよりゆがんだ愛を感じてしまったのだ。
飼育係は苦笑する。
「兄さん、でも個体を確認しなきゃならねえから、少し我慢してくれよ」
「・・・」
無表情のカルロをちらと確認すると、続けて飼育係としての
作業を続け始めた。
(部下がコショウを持ってくるまでの間だ。時間を稼がねばならぬ
 今はしばし我慢だ・・・)
カルロは思わず両手を拳にして握りしめていた。
その拳がわずかに震えている。
だが努めて冷静にしていた。

「ふたごみてえだなぁこりゃ!見分けがつかねえや」
飼育係は目を白黒させていた。
当たり前である。
蘭世が姿を”コピー”しているのだから。

部下のひとりが近くの喫茶店からコショウを持ってきた。
「遅い!」
「も・・申し訳有りません!!」
他の部下が飼育係に声を掛け、気を逸らしているうちに
カルロは一気に両カバへコショウを振りかける。

しかし。

(おまえ達〜!!!)

麻酔がきつかったのだろうか。
どっちのカバも曝睡しているらしい。
いっこうに何の反応もない。
くしゃみはおろか目覚めもしない。
くしゃみを連発したのは周りにいたカルロや俊、
そしてカルロの部下達ばかりであった。

結局、どっちが蘭世なのかわからないまま
2頭のカバは動物園内のカバ舎へと入れられた。
カバは蘭世を入れて全部で4頭だった。
狭いカバ舎が蘭世の分1頭増えたことで余計窮屈に見える。

(こいつら カバに ランゼって名前つけてたよなあ)
飼育係は掃除をしながらちらちらと、カバ舎の横で腕を組み
壁のそばに立つナイスガイを盗み見ていた。
俯き加減で身じろぎ一つしない。
つま先ひとつ、指先ひとつとっても隙がない。
その向かいで壁によりかかっている青年はともかく、
(俊はアルバイトの学生に良く雰囲気が似ていたのだった)
実に優雅な立ち姿の彼は、
獣臭さぷんぷんのカバ舎とは実に不釣り合いだった。

俊とカルロはカバになった蘭世の麻酔が切れるのをじっと待っていた。
半日は麻酔が切れないから一度帰宅してはと飼育係は勧めたのだが
俊もカルロも頑として側にいると言って聞かなかった。

(お前、忙しいんじゃなかったのかよ。帰ってもいいんだぜ)
(愚か者。ランゼが目覚めるのを見届けてからでなければ帰らぬ)
(あとは俺がかたづけておくから。俺ひとりで十分だ)
(そう言う問題では無かろう! )
またもやテレパシーで火花を散らす。

飼育係は通路でにらみ合いを続けている二人を横目で眺める。
(あんなにいい男連中なのに、夏は2人でカバと一緒に
 プールで泳いじゃったりしてるのかねぇ・・・)
『江藤に(ランゼに)さわるな!』と合唱したふたりの剣幕を思いだし、
草引きをしている手が止まる。
(添い寝もしてるんじゃあ・・・?)
いっ、いかん。
カバに寄り添い横になるナイスガイと好青年の妄想を振り払って
飼育係は作業を続けた。

(・・・!)

突然カルロと俊は同時に顔を上げた。
見ていなくても、その気配を察知したようだ。
蘭世の麻酔がようやく切れのだった。
(ああよく寝たー!)
カバの蘭世はのんきにひとつ大あくびをする。
目覚め爽快。
(・・・あれ?ここは?)
立ち上がってキョロキョロする。
大きなプールにカバたちがぷかぷか泳いでいた。
(ひゃーっ なによここは!?何で私こんな所にいるの?!)
そうやって驚く蘭世の姿はカバだからそこにいても
見た目は違和感ないのだが。
「ランゼ!」
「江藤!!」
俊とカルロは起きあがったカバに向かって柵の向こうから声をかける。
(あっ!真壁君!!・・・カルロ様も!)
カバの姿の蘭世はどどどどど・・・・と走って俊の前へいく。
その巨体は柵を壊しそうな勢いだ。
柵ごしに蘭世は俊に鼻をこすりつける動作をする。
俊はおい!やめろよ とかいいながら避けるまねをする。
しかし、その俊の表情はとてもうれしそうだった。

飼育係はその一部始終を見ていた。
彼はカバに愛着があった。
自分の仕事に誇りを持っていたから
俊になつくカバを見て、俊たちが同士に思えてきた。
非常にうさん臭く思っていたカルロを見る目が変わる。
へへへ・・と飼育係は嬉しそうに笑う。
「兄さんたちよぉ。カバも幸せそうだな。よかったな」
だが。
カルロはふっ と一瞬寂しげな表情をみせ下を向き、
カバ蘭世と俊を置いてカバ舎からそっと出ていった。

「オイ兄さん、おまえさんの兄貴にまた注意してやっといてくれないか?」
飼育係は床に落ちていた葉巻の燃えかすをほうきで指さし、
そしてそれをちりとりへと片づけた。
「動物の檻の近くは禁煙だってさあ、そこに書いてあるだろ?」
カルロがいたあたりの壁に”NO SMORKING”の張り紙がしてあった。
「はあ・・・」
「しかも吸い殻を捨てるたあ許せんね」
「すいません・・・注意しておきます」
(あいつは兄貴なんかじゃねえ!!)
そう思うが、言ったところでどうしようもないことなので俊は黙っていた。

(もう変身を解いていいー?)
(だめだ。飼育係が見ている)
(ええー!! もうイヤよこんな姿っ)
(もうちょっとだから、我慢しろ!!)

動物園から搬送用のトラックを借り、カバの蘭世を乗せて江藤家へ向かった。
俊は助手席に乗り込む。
カルロの黒塗りの自動車は何処にも見あたらなかった。
俊は少しほっ と胸をなで下ろしていた。
「また遊びに来いよー」
飼育係はそう言ってトラックを手を振り見送った。



夕暮れ時。江藤家の前庭に大きなカバが出現した。
椎羅は面食らって腰を抜かしていた。
空になった搬送用のトラックを見送った後、
ようやく蘭世は元の姿に戻れたのだった。
椎羅と鈴世は事情を聞き、姉の無事を心から喜んでいた。

ふと蘭世はメンバーが足りないことに気が付いた。
「あれ・・・カルロ様は?」
「さあな、知らねえよ」
俊にとってはカルロはどうでもいいことだ。
いなくてほっとしているくらいだ。


カルロはルーマニアに向かう飛行機の中であった。
予定よりも大幅に時間を割り込み、休む間もなく
次の取引についての書類に目を通していた。

カルロは分厚い書類から目を外し、ふと窓の外を見やる。
雲が、空の色が次第に紺色から黒へとその色合いを濃くしていた。
その色は蘭世の瞳と長い黒髪を連想させていた。
「ランゼ・・・」
念力でワイングラスに赤い液体を満たし右手に納める。
そして優雅な仕草でそれに口を付けた。

妙齢の女性にあのような変身をさせるべきではない。
やはり、一日も早く私のそばへ連れて帰り守ってやりたい。
カルロはそう決意を新たにするのだった。

後日。

動物園から再びトラックが江藤家に入ってきた。
それにはカバ用のエサが山と積まれていた。
飼育係からのプレゼントらしい。

「江藤、おまえにプレゼントだとよ」
「真壁君たらあっ!!」



・・・おあとがよろしいようで。

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