#ご注意#
このお話に出てくるZ(ツェット)と言う男性は
青池保子先生の漫画『エロイカより愛をこめて』のZ君とは
似てもにつかぬ男性でございます。
それだけどうかご了承下さい。
あと、設定はやはり『パラレルトゥナイト』と同じ、で
今回非常に自分の趣味に偏っております。
やばい〜と思われたら迷わずここから戻って下さいね。
(1)
真夜中。
古城を改築してレストランにしてあり、地下がパブになっている。
そのうす暗い地下の店に男達が数人、
個室のテーブルを囲んでいる。
なにやら酒を飲みながらカードをしているようだ。
たばこの煙と、アルコールのにおいが充満している。
ジャズの音楽が怪しい雰囲気を一層増幅させている。
慣れない者が入ると一気に気分を害しそうな空気であった。
そこでたむろしているのは・・カルロ家と敵対関係にある一家の一味だ。
彼らはマフィア。
一様にスーツできちんとした身なりをしていたが、
醸し出すオーラはどこか不気味であった。
テーブルのメンバーのひとりが口を開いた。
「ボス、おもしろい情報を手に入れました。
カルロに新しい女が出来たようですぜ」
「へえ・・・どんな女だ?」
カードと共に隠し撮られた蘭世の写真が場札として出された。
”ボス”と呼ばれた男が取り札と共にその写真を取りあげる。
「なんだ。あの野郎、ロリコンだったのか・・・おもしろい」
男達から笑い声が低く沸いた。
隣の男へ写真を廻す。
「結構な美少女じゃねえか。高く売れるぜ」
下卑た笑い声がまた漏れる。
最初の男がまたその写真を手元に戻しながら言う。
「相手はまだ学生らしく別々に暮らしてるらしい。」
「そりゃあ油断してるな」
「いや。学校に見張りを入れてるらしい」
ここでその男がスペードのクイーンを場札に出した。
「協力してくれる女が一人いる。 」
男達がざわつく。
「どこの女だ」
「・・・」
ボスの耳にだけそっと耳打ちされた。
それを聞いた男はにやりと笑う。
「いい機会だ。ここであの金髪の若造にゆさぶりをかけてやろう」
ここで誰かが役を出しゲームが終了した。再びカードが集められた。
ディーラー役の男がカードを配りながら言う。
「大事な物は少なければ少ないほどいいのさ。」
それに同調する一同。
「色男にはいろいろと敵ができやすいな。
付け入る隙がいくらでもあるぜ」
「しかし、その女いいのかね。自分の家を裏切ることに抵抗はないのか」
一族への裏切りが発覚すれば、殺されるのは間違いない世界である。
「知らねえな。嫉妬にでも狂ってるんじゃないのか」
「実際に動くのは誰だ?」
「俺に心当たりがあるぜ・・・」
男達の恐ろしい相談は続く・・・。
◇
気が付くと蘭世は埃っぽい床に転がされていた。
目が覚めたのに周りは何も見えない。
混乱する頭を落ち着かせてよく考える。
自分は今、一体どうしたのか。
目が見えないのは目隠しされているから?。
手足も自由が利かない。
口も塞がれていて話すことが出来ない。
私は?失神する前はどうしていたんだっけ・・・
確か学校にいたはず。
(わたし・・・誘拐、されたの?)
カルロ様が仕事で遠い外国にいるときだから
気をつけようと思ってたのに。
学校の中でなんで堂々と誘拐されてしまうの?
・・・そういえば、最後に、聞いたことのある
女の人の声を聞いた気がしたわ・・・
蘭世はまだぼおっとした意識の中。
「どうして私に引き渡してくれないの?
もうあの子は用済みなんでしょ」
その聞いたことのある声が、またどこか近くでしている。
なんかもめてるみたい。
ドアの向こうのよう。
耳を澄ませないとよくわからないわ。
「悪いね。俺にもいろいろと事情があるんだ。
お嬢さんのおもちゃ用にはちょっとあげられないね」
「何が事情よ!誰のおかげで誘拐に成功したとおもってるの」
「・・・お前さんがこの一件に関わってることを
リークしてもいいんだぜ」
「・・・おぼえてらっしゃい!」
「悪いね。忘れっぽい質(タチ)だ」
おかしいな・・・
男の方の声も 私・・知っている気が・・・
・・・また気が遠くなってきた。
次に気が付いたとき。
今度ははっきりと目が覚めた。
それでも視界は塞がれたままだった。
そして、床に転がっていることには変わりなかった。
さっきよりも目が覚めている分、
床の冷たさがはっきり感じられる。
「へへ・・いい玩具が手に入ったな。」
耳障りな がらがら声の男の声がする
にやにやしていることが声色からもわかる。
蘭世はその不快な声に身を固くする。
(誰!? ここはどこ?)
「おれはあの金髪の若造が気にいらねえ。
見せしめにお前をいたぶってやろう」
その誰かが耳が凍り付くような台詞を吐いている。
(ひょっとして、”お前”って 私のこと・・・!?)
「ひさしぶりに思い切り鞭がふるえるぜ
・・おい、目隠しと猿ぐつわを外しな」
「うっ・・・」
目の前が急に明るくなる。
蘭世がいたのは薄汚れた部屋だった。
どこかの廃墟だろうか。
あちこち壁ははがれ落ち、窓のガラスはひびがいくつも入っている。
冷たいすきま風が細く入ってくるのがわかる。
明らかに人相の悪い男達が数人、蘭世を取り囲んでいた。
「あなた達は一体誰!?ここはどこ?私をどうするの!?」
口も自由になった途端、疑問を投げつけるが誰も返事をしない。
振り返ると太って脂ぎった醜い男が鞭を持っていた。
そして、同じくチンピラ風の男達が数人。
猿ぐつわを外した男が鞭男に声を掛ける。
「お前そんなことして怒られないのかよ」
「かまうもんか。どのみちこいつは生きて帰れねえ。
傷の一つ二つ増えても同じだ」
恐ろしい言葉を聞き、蘭世は戦慄する。
「いやっ!離してっ!!やだ!!」
いくら暴れたって男3人に押さえつけられたらもうどうすることもできない。
「おい コートも取ってしまえよ邪魔だ」
抵抗も空しく柱を抱えるようにつながれる。
暖房のない部屋で制服だけになり空気がさらに冷たく突き刺さる。
「やだっ!!離して!!いや!!!!」
「じゃあ始めようかお嬢ちゃん。・・・まず名前を言ってもらおうか」
ビシッ。
空を切る音と共に背中に激痛が走る。
「きゃあああ!」
「いい声だ。それっ」
答えはどうでもいいらしい。
ただゲームのようにむち打つ理由を作っているかのようだ。
2度。3度。長い鞭は振り下ろされる。
男の馬鹿力で制服の背中は裂け、鞭の筋がいくつもつき
そこから赤い血が滴り始める。
「いやぁあ・・やだぁ・・うぅ・・」
蘭世は泣きじゃくり叫び続ける。
それでも無情な制裁は続けられる。
何故?何故こんな事をされなければいけないのだろう・・
蘭世に絶望、という二文字がのしかかってくる。
カルロがマフィアである以上、拉致されるということは
あるだろうと蘭世ですら薄々思っていたが、
想像していたよりもこの事実は厳しく、残酷であった。
助けて欲しい愛しい人は、今ここにはいない。
涙など出しても、誰も憐れんではくれない。
けれど、けれど・・・!!
(助けてカルロ様・・・!!誰か助けて・・・!!)
「何をしている」
突然、威厳のある声が響いた。
その声だけであたりの雰囲気が一変する。
「なんだツェットか・・・うっ」
鞭振るう男がいきなり殴りとばされ向こうの壁にたたきつけられた。
起きあがろうとしたところにツェットと呼ばれた男の銃が
間髪入れず向けられた。
ぴたっと、鞭男の額に照準が合っている。
男は戦慄する。機嫌を取ろうとひきつった愛想笑いを浮かべ
両手を上げた。
「よ・・よせよツェット。これはただのお遊びだ」
「俺の名を気安く呼ぶな。不愉快だ」
ツェットと呼ばれた男はさらに殴った男へと
つかつか歩み寄り銃を近づける。
「いつそんなことをしていいと言った。大事な商品に傷を付けたな」
「どうせこの女もう帰れねえんだろ、だったら・・・」
「口答えをするな。死にたいのか」
カチャリ、と安全装置が外される。
「今度の仕事では俺の命令に従えといわれているだろう」
「・・・・ちっ」
「雑魚を引き連れてこの部屋から出ていけ・・・今すぐだ!!」
男達はぞろぞろと部屋から出ていった。
蘭世はすでに気を失っていた。
つづく