(3)迷い
あの夢のロードショウを見てから、蘭世の頭の中はすこし混乱していた。
あの二人の姿はまるでカルロと自分を反対鏡に映したような姿である。
だけど、立場が少し違う。
・・・2000年前の歴史は繰り返される・・・
(あの時と同じならば、私は誰と一緒にいるべきなの?)
このままいくと俊は、冥王と戦いを余儀なくされ、封印で力を使い果たし人間になってしまうのだ。
・・・その彼を支える者は一体誰?
数日間、蘭世達は江藤家で過ごしていた。
ある日俊は廊下で蘭世を呼び止める。
「?」
とりとめのない話をするふたり。
そのうち、ついに俊はそれを口にした。
「ひょっとして、俺達は、運命のふたりじゃねえのか、って思ってさ・・・」
「・・・。」
蘭世は少し困った表情を浮かべた。
戦記を見たときから、確かに蘭世もそう感じているのだ。
2000年前と今とが全く同じに繰り返されるのならば
蘭世はカルロではなく、俊の側にいるはずである。
それで混乱がとまらないのに。
蘭世は何も言わなかったが、そう考えた事は、思考が読める俊に伝わってしまった。
俊は、つい一歩、蘭世に近づく。
でも。
蘭世は目を閉じ、深呼吸をする。
そして瞳をあげる。
「運命・・・なんて、関係ない。」
さらに詠いあげるような声で俊に答えた。
「わたしは、ダークが、好きなの。
もしダークが第3者だったとしても、
彼を想う気持ちは変わりません。
・・・運命だって、変えてみせる」
今までに見たことのない険しい表情の彼女がそこにいた。
(どこで歯車が狂ってしまったのかは判らない。
でも、私のこの想いだけは間違いなく確かなもの。)
蘭世はきっぱりと、宣言したのだった。
(そう、大事なのは自分の気持ちの在処だわ・・・!!!)
俊に問われたことにより、自分の気持ちのありかに はっきりと気づくことができたのだった。
「そんなにもあいつのことが・・!」
俊は一瞬カッとなり、思わず蘭世の両肩を掴もうとした。
蘭世はハッと我に返り、のびてくる俊の腕に気づき素早く後ろへと下がり逃れる。
あやうく髪の毛一筋の差で逃れたのであった。
「ごめんなさい!許して!!」
(私ったら、真壁君の立場も考えずにあんな事を言って・・・!!)
蘭世は、いちどぺこりとお辞儀をし、俊を残してその場を走り去っていった。
カルロは遠くの柱の影で、そんな二人を見守っていた。
(・・・。)
この数日後に蘭世は16歳の誕生日を迎えた。
冥王もあれから俊を探し回る気配がないのでカルロは蘭世を籍に入れ、
蘭世を別荘から本宅へと迎え入れた。
俊は江藤家でターナや他の魔界人と共に居候となった。
・・・冥界での決戦の日も近い。
つづく