『パラレルトゥナイト第3章:第2話:身代わり』



(1)新しい生活



蘭世が長い眠りから目覚めた翌日の朝。
椎羅はいつものように新聞をとりにキッチンから玄関へと向かっていた。
地下室の入り口にある胸像の前を通りかかったとき。

ごとごとっ

不意に音がして胸像が移動した。
「あら!こんな朝早くどなたがいらっしゃるのかしら?」
中からサングラスを掛けた黒スーツの男が昇ってきた。
「・・・ベン=ロウ、さんですわね?」
「お久しぶりです」
椎羅は望里を起こし、応接間にベン=ロウを通した。

「では・・・カルロは、自分がこうなることを予期していたと?」
望里は驚きを隠せない。
「・・・私はダーク様からあなた方の世界のことも伺っております」
「・・・で、あなた自身は?」
「ダーク様のおっしゃることは私は全て信じます。」
ベン=ロウは淡々と続けた。
「私はダーク様の腹心の部下であると同時に先代と私の父が いとこ同士という血のつながりもあるのです。
・・・あの方のお気持ちは私が一番良くわかっているつもりです」
望里も椎羅もしいん・・・とベン=ロウの言葉に耳を傾けていた。
「『わたしは帰るべき場所に帰るのだ』・・・とダーク様は・・・」
「・・・そうか・・・」
望里はやっとの思いでそう答える。
椎羅は思わず涙ぐんで部屋を出ようとした。
「おとうさん!おかあさん!・・・あっお客様?ごめんなさ・・」
蘭世が応接間にひょっこり顔を出した。続いて俊も。
「ベンさん・・・」
ベン=ロウは立ち上がり一礼をした。
「蘭世様。お迎えに上がりました」
「えっ?!」
蘭世は自分の耳を疑った。
望里と椎羅も顔を見合わせている。
「でも、もうダークがいない今、私が行っても・・・」
「蘭世様はもはや我がファミリーになくてはならない存在です。
 どうかお戻り下さい。一族を代表して私からお願いいたします」
「・・・そっ、そんな私は大それた事は・・・」
蘭世はうろたえてしまった。
「シュン殿。あなた様もおいで下さい」
ベン=ロウはさらに続けた。
「なんで俺なんかが・・・」
「詳しいことはまたお話しします」
「俺は行く気なんかないぜ」
サングラス越しのベン=ロウの双眸が険しく光ったような気がした。
<どうあっても来ていただきます。 シュン殿には是非お願いしたいことがある>
俊はびっくりした。
ベン=ロウがテレパシーで語りかけてきたのだ。
<じゃあ、おまえも・・・!>
<そういうことです>

俊は蘭世と共にルーマニアへ行くことになった。


(1)新しい生活2 へつづく↓

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