『君の瞳に天国が見える〜ときめきアナザーストーリィ〜』



(2)邂逅


ダーク=カルロは悪魔です。
元々人間でしたが故あって魔王ゾーンに捕まり、
その手下の魔女グッティ=ウッディに魔法を掛けられ
悪魔になったのでした。

カルロは元々少々の超能力を持ち合わせておりました。
しかし、悪魔になってもその力はさほど強まったりはしませんでした。
強靱な生命力と長い寿命を与えられたのは勿論です。
ただ、カルロは魔女達も予想だにしなかった
不思議な能力を芽生えさせておりました。

 それは・・・。

(・・・)
カルロは捕らわれの身として魔界への入り口へ
搬送されておりました。
異形の物達に囲まれながら彼らに似つかわしくない
青空の中を飛んでゆきます。
ただ、彼らの周りは澱んだ嫌な空気が取り巻いておりました。

カルロは両手両足をいばらの鎖でつながれています。
魔界の者らしくないスーツというものを何故か着ていました。
ただ、以前は髪の色や目の色に合う
淡い色の服を良く着ていたのですが
悪魔になってからは何故か黒いスーツにマント
という、さながら吸血鬼のような出で立ちになっておりました。
そして、金色の髪を流れる重い空気になびかせ、
すっと背筋を伸ばし、深い湖のような碧翠の瞳は
行く先へ鋭い眼光を投げかけておりました。


周りの異形の従者達がひそひそ話をしているのが聞こえます。
ナマズ男が隣のトカゲ男に話しかけています。
「しっかし、綺麗なお方だよなあ・・・」
ナマズ男がうっとりと囚われの悪魔を見上げます。
でも、トカゲ男はそれを咎めます。
「おい!あんまりじっと見るなよ!
目があって虜になっても知らんぞ」

そうです。
カルロは悪魔になった日から、目をあわせた者の心を惹きつけ
虜にしてしまう不思議な力を身につけていました。
それは、男でも女でも人間以外にも何でも通用していました。

やはりカルロを捕らえた魔界の王ゾーンも彼の虜になり、
溺愛し独り占めしたくて彼を幽閉しています。
そして、カルロはその不思議な力を使って見張り番を誘惑し、
何度も魔界城からの脱走を試みていたのです。

「おい、脱走はこれで一体何回目になるんだよ。」
「ああ、数え切れねえなあ。」
トカゲ男は疲れた顔でこりこりと自分の肩をもみました。
「カルロ殿も懲りないよなあ。
なんだってそんなに人間界に行きたがるんだい」
ナマズ男はどうも新米らしいのです。
そう聞くと、トカゲ男はあきれ顔で答えました。
「おまえ知らないのかい?なんでも人間界に想い人がいるんだってさ」
「カルロ殿が恋してる!?そいつうらやましいなあ・・・」
またナマズ男はうっとりしました。
「あほか。・・なんでも今年その想い人が黄泉の国へ旅立つんで
躍起になって阻止しようとしてるらしいぞ」
「それで今年は特に頻繁なんだねぇ・・・」
話していた二人はカルロの横顔を見上げました。

「ん?なんだありゃ」
見上げたナマズ男は空を指さしました。
何かがこちらへ向かって落ちてきます。

「おっ! 天使だぞっっ!!」
トカゲ男は落ちてくる銀白の翼を見て叫びました。
「おーい天使なんかまだ残ってたんだな!
槍で突き刺して捕らえろ!!!」

手に手に槍を持っていた異形の者達は
空に向かってそれを突き出します。
「こりゃいいや。天使の血酒が飲めるぞ!!!」
一同は喜びの雄叫びをあげます。

そのざわめきにカルロも天空を見上げました。
(!?)
カルロはその天使の姿を目に捕らえると何か胸騒ぎを感じました。
そして、碧翠の目が悪魔の紫に変わり光ります。

がくん。

引力に従って、でも気流にもみくちゃにされながら
落下していた少女天使の身体は、
突然何かの力によってするすると方向性を持って
引き寄せられていきます。

とすっ。

少女天使が着地したのは。ダーク=カルロの膝の上でした。





Next  

閉じてメニューへ戻る
◇小説&イラストへ◇