『君の瞳に天国が見える〜ときめきアナザーストーリィ〜』



(3)邂逅2



(!?)
ダーク=カルロは腕の中に落ちてきた少女天使を見て
愕然としました。
(まさか・・・?)
少女はあまりにもカルロの想い人に面差しが
そっくりだったのです。
皆を惹きつけて止まないあの愛くるしい姿。
でも、落ち着いて見てみると、髪の色や目の色が違います。
そして、想い人よりもわずかですが幼い感じをおぼえました。
決定的なのは背中に美しい銀白の翼を持っていることでした。
(・・・違う者だ。)
それに気づいたカルロはふっ と笑いました。
まるで自嘲しているような笑いでした。

「うう・・・」
少女天使は落下の恐怖の余韻で俯き、
まだがくがくと震えております。
「もう大丈夫だ。・・・お前は何者だ?」
カルロは少女に問いかけます。
少女はその耳に心地よい声を聞き、顔を見上げました。
「!」
男は少年天使よりもずっとずっと大人でありました。
金色の髪は少年天使を思い出させます。
そして、その碧翠の瞳はとても優しい眼差しで
彼女を見つめておりました。
「あ・・・。」
(なんて素敵な人!!)
少女は彼が悪魔であることなどすっかり忘れておりました。
それほど彼は悪魔と言うよりは神様のように
神々しい雰囲気だったのです。
「名前は何というのだ?」
もういちどカルロは問いかけます。
「ナマエ・・・?ナマエって、何?」
少女天使はきょとんとして答えました。
周りの化け物の一人が横やりを入れます。
「カルロ殿!天使のような下等動物にゃ名前なんかありませんぜ!」

それを聞き、カルロは思いつきました。
「では、私が名前を与えよう。」
そう、恋いこがれている、あの娘の名を・・・。
「・・・お前は ランゼ だ。」
「ランゼ?」
「そうだ。・・・ランゼ。そして、私はダーク=カルロだ」
(ダーク=カルロ・・・!)

両手は縛られているため動かすことは出来ません。
その代わりに慈しむかのように優しい優しい眼差しを
少女天使に向けます。
ランゼと呼ばれた天使の顔が見る見る赤くなります。

「きゃっ!」
突然天使の身体はカルロの腕の中から引き剥がされました。
「もうすぐ殺しちまう奴に名前なんか付けてどうするんですかい!」
大きな大きな槍に後ろから襟首を引っかけられ、
天使ランゼは宙づり状態になりました。
「いやっ!やだっ!離してっ!!」
天使ランゼを捕らえたのは大ガエルでした。
「天使の血酒を飲んだら不老不死になれるんですぜ。
今夜はカルロ殿も見つかったことだし祝杯だな!!」
「ランゼを離せ!」
カルロは思わず立ち上がり叫びました。

その刹那。
バシュッ
鋭い音がして大ガエルは金色の稲妻に貫かれました。
どおんという音がして大ガエルが倒れます。
続いてばさばさ・・・と羽音が聞こえてきます。

「おねえちゃんっ!!!」
「あっ!」

少年天使がものすごい勢いで飛び込んできたのです。
金の稲妻は少年天使が放ったものでした。
そして槍から天使ランゼを外すと素早く彼女を抱え
上へ上へと飛び立って行きました。
「天使を追いかけろー!今度は2匹だぞ!!!」
次々に声が挙がります。

「やめい!!」
ひときわ大きく野太い声が響きました。
その途端あたりはしん と静まります。
「お前達は今誰をお連れしていると思っているのだ?」
声の主はこの百鬼夜行の隊長らしき竜男でした。

 ここで天使を深追いし、折角捕らえた
 カルロ殿を逃がしでもしたらどうする。
 おまえたちがゾーン様の血酒になるつもりか?
 それともカルロ殿を無事送り届けて褒美をもらうのと
 どちらが良いのか、
 その足りない頭でよく考えるがいい!
 」
その声に一同は震え上がり、ぞろぞろと隊列を組み直します。
竜男は立ちつくし空を見上げているカルロに近づきます。
「さあ、カルロ殿。馬車は揺れますゆえ座りなせえ。」
そう言いながらカルロの肩を押し座らせます。
(・・・)
カルロは我に返り無意識に竜男を見ましたが、目線があう前に
竜男はくるりと背を向け列の先頭へ向かっていきました。
(・・・)
カルロは長い睫毛を伏せ、俯きます。
誰も気が付きませんでしたが、一瞬口の端で笑ったようでした。
なんだかそれは、”にやりと笑う”、という形容が
似合っているような笑いでした。

そして、百鬼夜行は再び北東の方角へと動き出したのです。




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