『君の瞳に天国が見える〜ときめきアナザーストーリィ〜第3話』



(5)逃亡



天使ランゼとカルロは息をきらしながら洞窟の出口を求め走り回っています。

天使ランゼは走りながらさっき自分が使った”力”を思い起こしていました。
(私にもあんな力があったなんて・・・!)
天使ランゼの放った”金のいかづち”により、二人は
あの部屋から逃亡できたのでした。
(私にも、カルロ様にしてあげられることがあって嬉しい!!)
一緒にいるこの人のことを考え続けて、
心臓がきゅうきゅうと悲鳴を立てています。

でも次の瞬間、魔界で苦しんでいる天使リンゼを思い出しました。
(・・・だめ!!この人を助けるのはあの子のため!!)
急いで頭をぶんぶん!と振って思考を散らします。
(他のことを考えなきゃ・・・!)

・・・しかしそんなことを考えている場合ではありませんでした。
(?確かこの辺りはさっき通ったような・・・)
「おかしいわ。さっきこの岩は見たような気がする」
そう、この洞窟には三つ目女の術が施されているのでした。
ぐるぐると同じところをめぐらされているようです。
次第に天使ランゼの息が上がって遅れだします。
それを見てカルロはすかさず天使ランゼを腕に抱えあげ、また走り出しました。
「・・・」
カルロが突然立ち止まり、静かに目を閉じてあたりの空気を読みます。
「こっちだ!」
カルロは横道へと走り込みます。

すると突然、目の前の空間が開けました。
「あ、泉だわ・・・。」
洞窟の中に泉がわいているようです。
「よかった。ここから元の屋敷へ戻れそうだ。」
「え?」
「私がランゼの元へ来た時と同じように泉から道を通せる。」
二人は急いで泉のそばへ行こうとしました。
しかし。
泉のほとりにゆらりと人影が現れ、行く手を遮ったのです。
例の三つ目女でした。
首からは血をだらだらと流しております。
「言ったでしょう?ここは私の隠れ家だって・・・。
どこへ 行っても 無駄よ・・・」
ニヤリと不気味な笑顔をうかべています。
二人は戦慄しました。

三つ目女の額の目が光り出します。

「危ない!!」

カルロは天使ランゼを抱えたまま素早く横の岩陰へ飛びこみました。

ばあん!という音と共に
三つめの”目”から光線が放たれたのです。
今まで二人がいたところには大きく焦げた跡がありました。

「おまえたち、殺してやる!!」

三つ目は次々と光線を繰り出してきます。
右へ、左へ。
二人は走り回り、飛びすさって逃げます。
爆音が響き渡り、いくつもいくつも洞窟の中に焦げ跡が出来ます。
そして、ぱらぱらと洞窟のなかの壁が壊れ破片が落ちてくるのです。

何度か避けた末に、ついにバランスを失い二人で転げだしてしまいました。

「カルロ殿・・・・にが・・さないわよ・・・」

天使ランゼはカルロに覆い被さる格好でした。
そして、その背後に三つ目女の近づく気配を感じます。

(もうだめ!!)

天使ランゼは決死の覚悟で振り向きます。


「!!!!」


2度目の”天使のいかづち”でした。
今度は、三つ目女の額の”目”を貫いていました。
『グゥ・・・!』
三つ目女の双眸が見開かれます。

『か・・・かるろ・・・』
三つ目女は倒れかかりながらも悲痛な表情で
カルロに抱きついてきます。
カルロがその女の腕に抱え込まれた途端。
ごとっ という音と共に、三つ目女は動かなくなりました。
二つの目は、大きく見開かれたままでした。

「あ・・・。」
天使ランゼはおそるおそるその動かなくなった三つ目女に近づきます。
「どうやら死んでくれたようだな」
「え・・・!?」
(や、殺っちゃった・・・!)
天使ランゼはどうしよう!! という表情でおろおろしています。
「仕方がないことだ。気にすることはない。
 ・・・お前のおかげで助かった」
「カルロ様・・・」
カルロが天使ランゼに微笑みます。
それを見て天使ランゼは安堵のため息を付きました。

でも、カルロは三つ目女に抱え込まれたままです。
そして、
「うーんっ あれぇ!?」
天使ランゼがいくら力を入れて引っ張っても、
三つ目女の腕はカルロを抱えたまま動かないのです。
そしてカルロは両腕ごと抱えられているので身動きもできません。

「・・・ランゼ、頼みがある」
「?」

天使ランゼはカルロに言われ、三つ目女の部屋へ戻って剣を取ってきました。
「かかげているだけでいい。刃を腕に当てて持っていてくれ」
「え?!もしかして・・・」
「女の腕を切り落とす」
「!!」

でも、そうしなければ三つ目女の腕からは抜け出せそうにありません。
天使ランゼは震える手で剣を持ち女の腕にあて、ぎゅっと目をつぶり
横を向いていました。

あとはカルロが魔力で力を入れていきます。
切り落とされるまでの間が、天使ランゼにはとてつもなく
長い時間に感じられました。
目をつぶっていても切り口からほとばしる返り血が
自分にかかる感触がしています。
そして嫌な手応えのあと、腕は切り落とされ
カルロの身体は自由になりました。
それでも。
カルロのシャツを三つ目女の手はどうしても握って離さないのです。
仕方なくカルロはその血で真っ赤に染まったシャツを脱ぎ捨てました。
(きゃ・・・)
場違いなのはわかっているのですが。
その逞しくも色気のある身体に天使ランゼは思わず赤面してしまいました。

ふと気が付けば二人とも三つ目女の返り血で真っ赤です。
ふたり、疲れた表情で顔を見合わせました。
「とにかく、助かったようだな。・・・どこも怪我はないか」
「うん。よかっ・・・・」
「ランゼ!?」

初めて”いかづち”を、しかも2度も放ったせいでしょうか?
天使ランゼは気がゆるみ、その場で倒れ込んでしまいました。

「ランゼ!?」

天使ランゼの意識を失う直前の耳に、愛しい人が自分の名を呼ぶ声が
響いていました・・・。



第3話 完




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